第73話 強化ポーション
「ギョエ〜〜〜っ!」
敵の断末魔が響く。敵は波のように押し寄せてきた。が、所詮は烏合の衆。またたく間に山の様に重なり合って倒れていく。
やがて敵たちも警戒するように距離を取った。
そちらから攻めて来ないのであれば……、俺が威圧するように魔力を放出するだけで、雑魚たちはその場からピクリとも動けなくなる。
「どうした? そこまでか?」
俺の挑発にも応えることなく敵たちは呻くだけだ。
やがて敵が二手に別れていくと、その間から竜の頭部を持った大男が現れるのであった。
「なかなかやるようだな。だが貴様が暴れるのもこれまでよ。この、水竜様から特別な力を頂いたこのリュージャ様が相手をしてやろう!」
これはまた、尊大な奴が出てきたな。どれ、レベルはどれ位なんだ?
リュージャとやらに鑑定を使ってみる。すると、レベルは1500と表示された。
あぁ、この程度か。全く、雑魚のくせにあんなに威張り散らしやがって。
俺が呆れ果てていると、
「グハハハハハ、どうやらビビってるようだな! いいことを教えてやろう! 俺様のレベルは1500を超えているのだ! どうだ? あ〜ん? チビって声も出ねぇのか?」
「うるさい」
俺は瞬時に刀を抜き、奴を切り刻んだ。もちろん、瞬きする程の間に、だ。
「貴様から来ねぇなら、こっちから行くぞぉ!」
リュージュが走り出した。が、俺に向かって走ってくるのは下半身だけだった。
上半身はそのまま、べシャッと地面に落ちる。
「な、ななな、何が起きた?」
腕を動かそうとすると、腕が落ちる。
「な! なぁ!」
あわてて腕を見ようとしたのか、首を曲げた途端、首が勢い良く回転し、真後ろを向いた。
「そ、そんなバカな……」
リュージュがその場に崩れ去ると、他の雑魚達はあっという間に逃げ去って行った。
「ふぅ、これで下らない戦闘は終わったか」
後ろを見ると、コンと大牙もそれなりに闘ってくれたようで、多数の敵を倒していた。
「お疲れ様。よくやってくれた」
「ワンワン!」
「はっ!」
コンは俺の脚元にじゃれついてくる。
「よしよし、よくやってくれたぞ〜。次はもっと手応えがある奴だろうから、次も頼むな!」
「ワンッ!」
とりあえず、二人を回復し、先に進んでいこう。目の前には巨大な鳥居がそびえ立ち、その先には石階段が続いている。
俺達は石階段を駆け上がっていくのであった。
*
「露払いはお任せください」
石階段を守る兵は多い。しかも、地形的に不利な下から攻めている状況だ。
だが、大牙の得意な技はナイフ投げだったこともあり、大した苦戦もなくどんどん進んでいく。たまに怪我もするが、俺はヒールが無限に使えるのだ。惜しむことはない。
コンも頑張ってくれている。一瞬であれば、風のように速い移動で近づき、長く、魔力を帯びた爪で引き裂いていく。
直接の戦闘は傷つくことも多いが、死んでも大丈夫だし、こまめにヒールが飛んでくることもあり、大胆に攻めている。
経験値がいいのか、二人とも着実にレベルアップしてるな。
俺は5分に一度ヒールをかけながら走るだけだから、楽ちんで助かる。
そんなことを思ってたら、階段の先にまた鳥居が見えた。
「ついに頂上か! 二人とも気を引き締めるぞ!」
「ワンッ!」
「はっ!」
頂上につくと、出迎えたのは竜の頭部を持つ大男の集団。
いづれも下で倒したリュージュ位の強さだろう。
せっかくだから、俺が作ったバフポーションを試してもらうことにしよう。
「コン、大牙。これを使ってくれ!」
二人にほをかけた。
「ワンワンッ!」
「こ、これは! 凄まじい効果ですな!」
気に入ってくれたようで何よりだ。さらに、二人にバリヤーをかけておく。
「よし、二人であの連中を倒してみてくれ!」
俺のバフポーションが果たしてどれほど他人に効果的なのか、試したかったんだよね。
大牙は一気に数十本ものナイフを投げつけた。
そのナイフは奴らの体を突き抜け、まるでレーザーの様に貫通した。
どうっ! と音を立てて倒れ込む大男たち。
コンは素早い動きがさらに強化され、奴らにはコンの動きが全く追えないようで、キョロキョロと見回しているうちに、鋭い爪で引き裂かれていった。
次々と倒れ込む大男たち。あっという間に二人は片付けてしまうのだった。
何と言うか……、もしかして、やりすぎちゃったかな?
ま、済んだことは仕方がない。弱めのポーションも用意して置かなければならんな。いざという時にやりすぎてしまうかもしれん!
「よし、よくやった!」
コンは褒めて! とばかりに尻尾を振りながら俺の脚に絡みつく。
大牙は俺に跪いて頭を下げた。
「大魔神様のおかげです!」
大牙は嬉しそうな声を上げる。
「レベルもかなり上がったようだね! この調子だ」
大牙のレベルは早くも800を超えた……、ま、いいか。済んでしまったことは仕方がない!
「よし、本殿に乗り込むぞ!」
俺たちは、水竜の棲む建物の中へ入って行くのであった。
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