第196話 三回戦第一試合 REN VS ジーク
「三回戦第一試合、獣人族代表ッ! REN VS 死の国代表ッ! ジークッ! レディ………………、ゴーーーーーーーッッッ!!!」
「さぁ始まりました! REN、ジーク共に動きはありません。両者睨み合ったまま、まずは睨み合いから始まりました!」
「RENはイヴリスを助けたり、ミリィを介抱したりと、ジークの対戦相手に気を使ってきましたからね! 両者ともに思うところがあるのでしょう!」
ジークは動かない。一体何を考えている?手にはあの聖剣すら持っていないのだ。
俺は自分の聖剣を引き抜いた。正眼に構え、いつでも攻撃できる姿勢をとった。
だが、そこまでしても奴は構えすら見せなかった。
ならば、こちらから仕掛けるのみ。
いざ、踏み出さんとした時、ジークはその口を開くのだった。
「RENと言ったな」
「今頃になって会話をご所望か?」
「あぁ、ワシと貴様がやりあえば、いずれが勝つにしても必ず消耗が激しくなるに違いあるまい。そんなことでは決勝に万全で向かうのは難しかろう? どうだ、ワシに勝ちを譲らんか?」
ジークが最初に降伏を勧告してくるかも知れないというのはイヴリスとミリィから聞いていた。もしかしたら俺にも聞いてくるだろうとは思っていたが、本当に聞いてくるとはな……。だが、答えは最初から決まっている。
「断る。俺には倒さねばならぬ相手がいる。ソイツの息の根を止めるまでは、負けるわけにはいかない! いくらお前が強くとも、倒してみせるッ!」
「ワシに勝つとな? ワシはリッチになってからこの数百年、負けたことなど一度も無いのだぞ? 蛮勇を奮う相手を間違えておるのではないか?」
ジークの目に赤い光が灯った。そして溢れ出るのは人外にしかあり得ないほどの魔力。ドス黒いその魔力はジークを覆い尽くし、俺の周りを飲み込み、やがて舞台さえも飲み込んだ。
「ジークが、その魔力を開放していく〜〜〜ッッッ!!! その膨大な量たるや、私は生まれてこの方、これ程の魔力を見た事がありません〜〜〜ッ! 舞台が、闇に包まれてしまいましたッ!」
「まさか、これ程の魔力を持っていたとは……、いやはや、恐ろしい存在です。魔力の少ない相手ならば、これだけで動けなくなるでしょう! RENの動向に注目しましょう!」
俺はこの膨大な魔力を持っている事は事前に分かっていた。なぜならそれはイヴリスやミリィから吸収した魔力が上乗せされているからだ。特にイヴリスから吸収した魔力は余りにも多すぎた。それゆえ、この状況になることは事前に予測していたのだ。
「フッ……」
余りにも想定内の状況に嗤いが漏れてしまう。
「何がおかしい? 絶望を前にして気でも触れたのか?」
「いや、アンタが余りにも滑稽でな。そんな借り物の魔力如きで俺を脅そうなどと、無駄にもほどがある」
「そうか、屈せぬか……。ならば仕方あるまいッ! 出よ、わが下僕たちよッッッ!」
ジークの周りに立ち上がってくるのは影。それ数は恐らく三十体を優に超えていた。
「ジークの……軍団が、今ここに登場したーーーッッッ!!! 一体、何体の眷属を従えていたというのか〜〜〜ッ!」
「これは恐ろしいですね! リッチだけでも10体以上います! それにあのデュラハンを先頭に、ナイトタイプのアンデッドも相当数いますね。これ程の数で攻められるとRENとしてはかなりキツイのではないでしょうか?」
ジークの周りに現れたアンデッド達も目を赤く光らせ、今にも襲いかかってきそうな雰囲気である。
ジークは手に持った聖剣ヴォルグスネーガの剣先を俺に向け突き出した。
「「「ウオオオオオオオォォォォォォォ!!!!!」」」
アンデッドたちの咆哮と共に、進撃は始まった。
鎧を着込んだアンデッドのナイト達を先頭に後方にはリッチ達が魔法陣を浮かべ、臨戦態勢を整えた。
そして、戦いの火蓋は切って落とされた。
最初に飛んできたのはリッチ達の魔法。それも数十発。炎や氷、土の槍や、風の真空波が、山のように押し寄せた。
「さて、アンデッドたちのお手並み拝見といこうか!」
俺は聖剣を構えた。そして、ジークの軍団に向かい、駆け出していく。
襲いかかる魔法達は全て、聖剣で切り裂きながら。
「いよいよ激突~~~~~ッッッ! 軍団を成しているアンデッドに対し、RENは聖剣ただ一本ッ! だが、迫りくる魔法を全て切り裂いていきます! さらに一瞬のうちに進んでアンデッドナイトに斬りかかっていくーーーッッッ!!! な、なんとッ! 一撃でナイトを両断しましたッ! 凄まじい剣技! これがRENの実力か〜〜〜ッ!」
俺の前に立ち塞がる雑魚は一刀の元に切り伏せていく。そしてあのリッチでさえも抗うすべなく、俺の一刀の元に消え去っていった。
「むぅッ?! どういうことだ? ワシの部下達がやすやすと消え逝くなどありえんッッッ!」
激昂するジークを尻目に俺は次々とアンデッド達に襲いかかって行くのだった。
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