第16話 お寺と琵琶湖疏水 その3
色々あったものの、何とかまとまっての見学を終え、班別自主研修に移る。
到着が想定よりも早かったこともあり、俺たちに用意された時間は1時間半程。
当初の予定では1時間あるかないかくらいだったので、だいぶ余裕ができた形だ。
色々回りたいところはあったが、ちょうど解散したところが駐車場からそんなに離れていないところだったので。
「まず琵琶湖疏水行こっか」
「琵琶湖疏水?……ああ、パンフレットに載ってるココ?」
「そう。流石に桜は咲いてないけど、時期的にも紅葉がきれいだからせっかくなら最初に行こうかと。他のところって一回上がらなきゃいけないし、あとに回そうかなって思って」
「私は賛成。琵琶湖疏水のココって琵琶湖もギリギリ見えるらしいし、楽しそう」
「ちとせちゃんがそう言うなら。タケくんは?」
「彩希が行きたいって言うならいいぞ。ついでにちょっと足を休められるしな」
「ならまずは琵琶湖疏水だな。……こっちから出ればいいのか」
パンフレット内の地図に従っていったん三井寺を出ると、まもなく琵琶湖疏水沿いの道に出る。
その道を少し進むと、橋が見えてきた。
その橋から写真を撮ると、琵琶湖疏水と三井寺を一緒に写せるらしい。
ただし。
「結構遠いな、こりゃ」
「ホントだね……。スマホじゃ無理だよ、この距離じゃ」
「じゃあこの写真撮るのは諦めるしかない、かな?」
悲しそうな顔をするちとせと彩希さんにあえて気づかないふりをして、背中のリュックを下ろす。
そして、首から下げていたカメラのレンズを外し、リュックの中から取り出した望遠レンズをつける。
「あの建物がこの位置だから、このくらいかな……」
「政信?」
「ん?」
「それ、もしかして望遠レンズ?持ってきてたの?」
「そうだよ。絶対必要になる場面があると思って持ってきておいたんだ。まさか早速役立つとは思わなかったけど」
俺が今回使ってるのは一眼レフカメラ。
電車を撮るつもりだったのと、清水寺に行くのが確定していたため、景色を取るときに必要になるだろうと見越して望遠レンズを持ってきておいたのだ。
「政信、その写真って――」
「あとでホテルついたら送っとくよ」
「ホント!?ありがと!」
「ついでに武弥にも送り付けとくわ。武弥、お前から彩希さんに送ってくれ」
「オッケ。気の利くやつで助かるな」
「親友だし、俺の彼女の親友の彼氏だしな」
「そこまで信頼してくれてると俺も嬉しいね。これで所構わず砂糖をばらまくのやめてくれたらもっといいんだけどな」
「あー聞こえない聞こえない何も聞こえなーい。……こんな感じでどうだ?」
撮った写真を見せてみる。
「完璧じゃん!まんまこれじゃん!」
「ほんと、政信って写真撮るの上手いね」
「そりゃあんた、時速320kmで走ってる新幹線を一瞬のタイミングに合わせて撮ってんだもん。動いてないやつなんて余裕よ」
それを聞いて納得するちとせたち。
「それより、なんだかんだで喋りながら撮影してたらもう20分近く経ってるぞ。そろそろ三井寺に戻ろう。いろいろ見学するでしょ?」
「そうね、足も休まったしそろそろ行こっか」
もう一回三井寺に戻り、今度こそ三井寺の散策に向かう俺達だった。
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