第9話 京の都の玄関口にて
列車は新横浜を出てから1時間以上の間爆走し、名古屋へ差し掛かった。
名古屋駅に停まると、すぐにドアを閉めて動き出す。
後ろから後続ののぞみ号が猛接近してきていることもあり、名古屋駅を出るとあっという間にトップスピードに到達する。
次の停車駅は、今日の降車駅である京都。
岐阜県と滋賀県を素通りである。
京都までの所要時間は40分程度。
時間はあるようでない。
何しろ、京都駅の停車時間は僅か1分。
その間に、100名を超える生徒が4つのドアから全員降車しないといけない。
さらに、降車後は速やかにバスに乗り換える必要があるため、お手洗いは事前に車内で済ませるように、とのこと。
新幹線のお手洗いは数が多いわけではないので、今のうちに行っておくことにした。
京都駅が近くなってから混んで慌ただしくなるよりはマシ、と判断したのである。
全員がお手洗いを済ませ、荷物をまとめ終わったところで雑談していると、放送が流れる。
『まもなく、京都です。東海道線、湖西線、山陰線、奈良線と地下鉄線、近鉄線はお乗り換えです。京都の次は、新大阪にとまります』
放送と同時に列車は減速を始める。
俺たちは席を立つと、忘れ物がないか確認した後、デッキへ。
最初の頃は全く人が居なかったが、時間が経つに連れ、どんどんデッキに人が集まってくる。
やがて完全に停車し、扉が開くと同時にホームへ降り立った。
「来たぞー!京都だー!」
「やっと着いたか。う〜ん、めっちゃ長かった!」
「もう何度も乗ってるもんね~。あー、ここからまたバスで移動でしょ?」
「そうだよ、ちとせ。確か着く頃には昼時だったはず」
「そうだよね、だって着いたらまず最初がお昼ごはんだもんね……」
「そうだったよな……、まったく、バスで1時間以上はちょっとキツイぞ?」
「ほんとそのとお――」
「あれ、井野先輩と高山先輩!?」
「ん?……おお、目黒か。一昨日ぶりだな」
「ほんとだ、目黒ちゃんじゃん、久しぶり〜」
「やっぱり!……修学旅行かなんかですか?」
「そーなんだよ。土曜日まで西日本の色んなとこ巡るんだわ」
「そうなんですね!……あれ、でもこないだ今度は土曜の夜に来はる言うてませんでした?」
「来るよ?」
「え?」
「東京帰るけど、すぐの新幹線でこっちにとんぼ返りすんの」
「ほへぇ〜」
そのことによほど驚いたのか、開いた口が塞がらなくなる目黒さん。
「ほな、うちは学校ありますんでこの辺で。また土曜日に〜」
「またね〜」
現地の女子高生と喋っていた俺たちに、当然のごとく疑いの目を向ける武弥たち。
「あの子はね、こっちにいる知り合い。今も基礎的な吹奏楽の技術を教えながらダンス習ってんの。振り付けなんかもしてもらってる」
とある関西の有名高校の、ダンス部の顧問の方と知り合いになり、ダンスを習いながら振り付けをしてもらったり振り付けのコツを教わったりしていた。
その代償として、先生が副顧問としてみている吹奏楽部の基礎指導を担当するようになっていたのである。
もちろん、基本的には自分のところが最優先であり、行かない週もあったが。
そんなこんなで、俺とちとせの共通の知り合いができていたのである。
そしてこのとき、俺はある可能性を見落としていた。
大阪に引っ越した、あの娘に会うかもしれない、というのとを。
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