第10話 京都だけど京都じゃない その1

 京都駅到着。

 僅かな停車時間の間に全生徒が降車を終え、バスの待つ駅前ロータリーへ。

 八条口側の高速バスが止まるところに、観光バスが3台停まっていた。

 我々が乗るバスたちである。

 バスの中の座席は自由なのをいいことに、俺たちはいの一番に乗り込んだ。

 そして一番うしろに俺とちとせ、真ん中を1席開けて武弥たちというかたちで座る。

 そもそも座席数に対し生徒数が少ないがためにできる技であるが。

 それから少しの時が開いて、ぞろぞろと他のクラスメイトたちが乗り込んでくる。

 全員が乗り込み、先生が人数をチェックして出発準備完了。

 他のクラスも完了したところで、いよいよバスが動き出した。


 バスはロータリーを出ると、近鉄線の下を潜って右へ曲がり、JR線の下をくぐる。


 近鉄線をくぐる手前に信号があり、停車中に近鉄特急を拝む。

 残念ながら、明日使う近鉄線は近鉄特急はほとんど走らない路線なので、今のうちに拝んでおく。


 バスはそのまま進み、西本願寺の前を通る。


「ちとせ、ここ覚えてる?」

「西本願寺でしょ?1回来たことあるよね?」

「覚えてたんだ」

「覚えてるよ。あのときは何故か夜行高速バスで行ったから何すんのかと思ったらさ、新幹線だとギリギリになるからって行って。そしたら今度は早すぎたって言って西本願寺言って朝の読経やったじゃん」

「まあそのくらい早くないと参加できないし」

「でもびっくりしたよ。普通に般若心経とか他の参拝客に混ざって読んでんだもん」

「あれは、今も偶に見てるけど、歌うやつあるでしょ?」

「あるね」

「あれしょっちゅう聞いてきたのもあって一通り暗記しちゃったんだよ」

「ほえ〜。言われてみれば一部だったら私も言えるようになったもんね」

「だろ?」


 説明すると。

 その日はホールを借りて朝から練習というときで、朝一の新幹線で行ったとしても間に合わないことが判明し。

 夜行高速バスで行ったはいいが、その便があまりにも早く、早朝5時すぎについてしまったのだ。

 そんな時間に行ったところでやることはないし、そもそも朝ごはんを食べるところすらない。

 そんなとき、ちょうどいい時間つぶしになるかと思って、西本願寺の朝の読経に行ったのだ。


「二人の話はよくわからんが、西本願寺は行ったことがあるんだな」

「みたいだね。……今日行くのは全然違うところだけどね」

「そもそも京都なのか怪しい所だしな」


 バスは清水寺のそばを通りながら滋賀県へ入り、琵琶湖沿いを北上。

 ある程度のところまで北上すると、そこから京都府と滋賀県の県境にある山を登っていく。

 その途中で眼科に見える琵琶湖は、まるで海のようだ。

 そんななか、一戸だけものすごい目立っている高層建築があった。

 他の建物が低いせいもあり、超目立っている。

 それこそが、本日の宿泊先である『びわ湖大津プリンスホテル』だ。


 さらに琵琶湖と山の間に、白い線のようなものが伸びていた。

 時折灰色がかった四角い箱のようなものの中を通るそれは。


「あれが湖西線だな」

「あれが?じゃああの四角いのは?」

「ありゃ全部駅だよ。湖西線といえば踏切が1つもなく、北陸方面へ向かう大量の特急たちが時速130kmで走る特急街道でもある。もっとも、冬の風には弱いけどな」

「そうなんだ〜。あ、ほんとだ、よく見たらすっごいちっちゃいけど電車が走ってるね!」

「ほんとだ。意外と目立つんだな」


 そんなことを話しているうちに、バスは山を登る道から逸れて駐車場に入る。

 

 そここそが、本日の最初の目的地にして修学旅行最初の見学地。


 昔織田信長によって焼き討ちにされたことでも有名な、『比叡山延暦寺』だ。





―・―・―・―・―・―・―・―・―


 西本願寺の朝の読経に私が参加したのは、2019年の7月末のことです。

 当時はまだ中学生でした……。


 あのときはほんとに眠かった。


 ちなみに、般若心経の音楽は、You Tubeにて見ています。

『歌う僧侶 キッサコ』さんという方です。私は020 cho.verが好きですね。

 すんなりと般若心経が入ってきますので、聞きたい方はぜひ調べてみてください。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る