第8話 超高難度の心理戦 決着
現在の状況。
ちとせが2枚、俺が1枚という状態。
そして現在は俺のターン。
二分の一の確率で俺の勝利という状態だ。
どちらも絶対に負けたくないという思いは強い。
当然、二人揃って全力で挑むわけで、そのためにもお互いに殺気を隠そうとしない。
「さあ、政信、かかっておいで?」
「安い挑発には乗らんぞ?」
「そう。でも確率は二分の一でしょ?早くやったほうがお得だと思うけど」
「そうやって急かすの良くないと思うぞ。……さて、どっちを取るかね……」
ちとせも分かっているのか、どっちをつまんでも目尻が動かない。
となれば、本当に僅かな違いを見つけ出さなくてはならない。
最後の最後でとんでもなく難しい問題にぶち当たったのだった。
その後。
「政信には勝てなかったか……!」
「ふう、なんとかちとせに勝ったぞ……」
一か八かで、わずかに目が歪まない方を選び、無事に勝っていた。
「やっぱりちとせは、ニヤッとしていただろ」
「うそ?私心の中でしかニヤついてないよ?」
「若干だけど目に出てたぞ」
「うそぉ〜?」
「政信、おまえちとせさんのどこ見てんの?」
「私もちとせちゃん見てたけど、ずーっと表情変わってなかったよ?」
「阿呆。いいか、これは心理戦なんだよ。ほんのちょっとの違いが見抜けなけりゃ勝てないの」
「そんな本気でやらなくても……」
「なにかおっしゃいました?」
「いえ、ナンデモナイデス……」
ババ抜きが終了した瞬間、俺たちのまとう雰囲気はいつもの大変柔らかいものに変化していた。
それが関係しているのかは不明だが、車内の静寂は消え、また各々おしゃべりやゲームに興じていた。
「……ババ抜きはもうやめよう。次は何する?」
「次ねえ……。雑談で良くない?」
「雑談か。具体的には何を話す?」
「そうだなぁ……、五〇〇の花〇の話とか?」
「いいねえ!聖地巡礼するんでしょ?」
「大部分で出てくるのは愛知県の方なんだけどね。修学旅行の時を中心に出てくるんだよ」
「それであのかつかつ計画と化したわけね?」
「そういうこと。ちなみに、今回奈良から神戸への移動で使う近鉄電車は何気にすごい鉄道会社です。何でしょうか?」
唐突に出したクイズ。
しかし、そのクイズにあっさりと答えるものがいた。
「確かあれだろ、大手私鉄の中で一番規模が大きいんだろ?」
「そうだよ。特に奈良のあたりは近鉄以外に選択肢がないくらいにね」
近鉄電車。
その正式名称を、近畿日本鉄道株式会社という。
奈良、名古屋、伊勢志摩、京都、大阪、吉野、橿原と広範囲をカバーし、さらに阪神電車に直通することで神戸にも足を伸ばす。
特に京都〜奈良、大阪〜奈良は近鉄の圧勝である。
さらに、伊勢志摩方面には大阪・京都・名古屋から特急がたくさん出ている他、大阪〜名古屋は安くて豪華で早い、特急「ひのとり」などによって結ばれている。
ひのとりの日中の列車の停車駅は目を見張る者があり、大阪難波と近鉄名古屋を結ぶこの列車の停車駅は、大阪上本町、鶴橋、津のみ。
鶴橋で大阪環状線と交差し、大阪難波は大阪環状線の中にある駅である。
大阪を出たら奈良県をスルーして三重県に入り、津に止まった後名古屋までノンストップという恐ろしい速さ。
こんなのが1時間に1本走っているという会社である。
だから、奈良を経由に含む時点で近鉄を使うことになるのだった。
もっとも、お世話になるのは明日だが。
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