第19話 最終戦 その3

 キンコーンと、玄関のチャイムが鳴る。


 モニターには、千春と邦彦の姿が映し出されていた。

 お義父さんがさっとモニターの元へ行き。


「鍵は開けた。早く入りなさい」


 棘のある声で一言。

 それを聞いた千春達が入ってくるのを確認した瞬間、俺達の雰囲気は一瞬で豹変する。


 快楽殺人犯ではないが、サイコパスのような雰囲気。

 武弥に言わせれば、「殺すことを喜んでいるような怖い雰囲気」らしい。


 千春たちが座ったのを確認し、口を開く。


「やっと来たか。……始めようか、素敵な素敵なパーティーを」


 静かに殺意の炎を立ち上らせる俺。

 怒ると怖い両親に鍛え上げられただけあって、俺もちとせも殺気をだしたりといった、相手に恐怖心を植え付ける行為は簡単にできる。


 問題はそこではなく、出力の加減が難しいということ。

 両親のように、特定の相手だけをビビらせるというのが未だにできないのが俺たちの欠点。

 それでも効果は十分で、千春たちが固まるのが分かる。

 そのまま黙って動かないので。


「あのさ、話に来たんでしょ?なんとか言ってくんないかな?」

「……い、いつまでもそっちが有利だと思わないことね」


 何を言ってるのかよくわからないので、全部無視することにする。


「今日話したいのは2つ。1つは前交わした約束を破ったことについて。もう1つはSNSでの問題について。いいね?」

「そんなの、分かってるわよ」

「なら話は早いな。まずは約束破りの話からしようか。……前回俺はなんて言ったっけ?」

「近づくな、でしょ?近づいてないのになんで約束破ったことになるの?」


 あまりにも頭の中がお花畑な千春に、一瞬頭がフリーズする俺。

 そして怒りが一瞬で沸点に到達したちとせが。


 バゴン!


「交わした約束と違うでしょ。私にも政信にも、金輪際関わるなって言ったでしょ!しらばっくれてるんじゃないわよ!」

「関わってはいないじゃない」


 大噓つきにもほどがある。


「嘘吐いてんじゃないわよ!あんたたちSNSで虚言大量に発信したじゃないの!」

「はあ?何いってんの?」


 すると。

 そこまでずっと黙っていた邦彦がおもむろに口を開いた。


「ちとせさん、政信も。さっきから僕達がSNSで嘘を発信したと言っていますけど、まずなんで嘘って言い切れるんですか?それに僕達がやったってどうして言い切れるんですか?」

「嘘だって言える理由は後で話す。そっちに関する話をするって言ったからな。SNSの正体がお前らだってのは言い切れるさ。あのアカウントはお前たちのだからな」

「その証拠は?」


 あえて悔しい顔をしてみる。

 勝ち誇ったような顔を向けてくる邦彦と千春。

 どうやら俺たちが対抗するすべはないと踏んだようだ。

 アホらしく感じたので、さっさとネタばらしすることにする。


「それについてはたっぷり調べてもらったからね、証拠はあるよ。ねぇ、お義母さま」

「そうね。証拠ならいっぱいあるわよ」


 思わぬ助っ人に、さっきまでの勝ち誇ったような表情から一転、その顔が固まる邦彦たちだった。

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