第30話 ようやくだ 大人の階段 登ったり

 酒田が一人で酒盛りしていた頃、政信の部屋では。




 とても甘い雰囲気が流れていた。

 そりゃそうである、本来オトナな夜を過ごさせるのを咎めるべき立場である担任が、「ヤッてもいい」だの言ったのだ。

 もとからその気だったちとせはもちろん、健全な(?)男子高校生である政信だって、そういう欲はあった。


 それでも今日は4人部屋ということもあり、なんとか我慢するつもりだったが。

 同室だった二人が別の部屋に移動したこともあり、政信を抑えつける枷はほぼないも同然の状態であった。


 それでもまずは荷物の片付け、そして明日の支度である。

 明日は宿泊地が変わるから、すべての荷物をまとめなくてはならない。

 それを朝食前に終わらせろというのだから、余裕のある今のうちに終わらせておくのが当たり前というもの。


 政信とちとせは、お互いほぼ無言で片付けをする。


 片付けに30分かかり、終わったところで。


「ちとせ、お風呂どうする?どっちが先入る?」

「政信先どうぞ」

「じゃあお言葉に甘えて」


 ちとせの言葉に甘え、先にお風呂を済ませる。


 そそくさと済ませ、ちとせと交代し。


 スマホで明日歩くところの地図の確認や、使用する駅の構内図と時刻表を確認しているうちに、ちとせがお風呂から出てきた。


「ちとせでたの――ってえ!?」


 出てきたちとせの姿にびっくりしてしまう俺。

 なぜならちとせは、バスタオル一枚だったからである。


「ち、ちとせ!せめて下着くらい履いてくれないか?」


 だがちとせは返事しない。

 俺の腰掛けるベッドに一直線にやってくると、隣に腰掛ける。


「ち、ちちちちとせさn――」

「政信、聞いて」


 普段聞いたことのない、儚くか弱い声を聞いた俺は、こくんとうなずく。


「私ね、すごく怖いの。高砂さんに政信が取られちゃうんじゃないかって。いつか政信の心が、私から高砂さんに移っちゃうんじゃないかって」

「そ、そんなことないよ!俺は、ちとせ一筋だもの」

「ほんと?」

「ああ、本当だ。神に誓って言えるよ、俺はちとせ一筋だって」

「なら、お願いがあるの」

「お願い?」

「そう。政信、私のお願いはね――」


 ちとせが、バスタオルをはだけさせながら言ったのは。







  







 その魔の言葉に俺の理性は耐えられず。






 琵琶湖と月に見守られながら、俺たちは一線を超えたのだった。





//////////////////////////////////////////


 ようやくです!ようやく政信とちとせが大人の階段を登りました!


/////////////////////////////////////////

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る