第12話 京都だけど京都じゃない その3
「ここが根本中堂です」
そう言われて最初に俺の頭に浮かんだのは、工場みたいだ、という一言だった。
なんでも今は大改修の真っ最中のようで。
建物自体を建て直すのに近いことをしているのだとか。
そういえば数年前に日光行ったときはちょうど輪王寺が大改修やってて立て直してる真っ最中だったな…などと思いつつ、中へ入っていく。
外から見た感じは完全に工場なのだが、中はそうでもなかった。
なにせ、根本中堂をすっぽり包んでいるだけなのである。
中に入ると、そこには根本中堂がどーんと佇んでいた。
靴を脱ぎ、中へ入っていくと、段のようになっているところで座るよう指示がある。
お寺なので、半ば本能的に正座。
真っ先に入った俺達がそうしたので、後ろから入ってきた人たちもみんな正座する。
全員が入ったところで、お坊さんがいらっしゃり、説法を始める。
お堂の中に点っている火が、延暦寺ができてからずっと消えたことがないという話には驚いた。
焼き討ちにあった際は、他のところに分火されていた火を再び持ってきたらしい。
だから、本当にず〜っと消えてないんだとか。
そして、それを消さないように、ちゃんと油を足しているという。
さすがにそばまではいけないものの、写真を撮ることは許されたので、写真に残しておく。
説法が終わると、ひとまず根本中堂の前で集合写真を、ということになっていた。
というのも、根本中堂は国宝に指定されているほどのものだからである。
しかし、現在根本中堂は大改修の真っ最中であり、その見た目はただの工場である。
どこからどう見ても寺ではない。
そこで、今回はそこから少し上がったところにある、別の建物の前で撮影することになった。
人通りも多いので、手早く写真を撮ると、解散。
およそ1時間半後の集合を伝えられ、各班ごとでの見学を開始する。
まずは根本中堂に戻り、特別に上から回収の様子が見られるというところに上がる。
工事現場とかにありそうな階段を登ると。
「おお〜。こんな感じで建てていくんだ」
「すんごい量の木だね〜」
まさに建てている真っ最中であり、ちょうど木材が丸見えの状態。
そこに使われている木材の量の凄まじさに驚く。
「よし、時間もないしサクサク行こう」
「そうだね。ほかも見るって考えたらちょっと急がないとだもんね」
「分かってるじゃないか。……夢中になって写真とってたらもう20分くらい経ってるな。あと70分しかない」
「それは大変だな。よし、次はあっちに行くか」
「うん。ここからは駐車場に向かって進みながら見学していこう。時間がなくなったらそこまで。いい?」
「私は抹茶ソフト食べられたらそれでいい」
「ちとせ、抹茶ソフトは明日の方がいい。明日は宇治の方まで行くから絶対そっちのほうが美味しい」
「それもそっか。あとここ意外と涼しいし今日はやめとく」
「ん。……さ、行くぞ」
少し早歩きをしながら、次々と延暦寺の中を巡っていく俺たちであった。
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