第18話 【悲報】政信、死亡の危機 その6
政信が入院してから早くも1ヶ月半ほどが経過し、9月に入ったある日。
武弥と彩希が2人揃ってお見舞いに行くと、病室の中には人が2人。
1人は入院している当事者の政信。
そしてもう1人は、ベッドに寝ている政信のおなかの部分に突っ伏すようにして寝ているちとせだった。
その横顔は明らかにやつれており、ずっと病室にいることなど容易に想像できた。
政信の両親は飛行機がなかなか乗れず、結局帰ってきたのはわずか数週間前ではあるが、帰ってくるなり看病の交代を申し出た親に対し、ちとせはそれを拒否。
結果、先週の始業式すら出席せず、以後欠席を続けているのである。
学力は問題ないが、これではそれこそ1年とか目を覚まさなかったら2人揃って留年しようとする勢いであり。
さすがにまずいだろう、ということでそろそろ学校へ連れ出そうとしてきたのだ。
「ちとせちゃん、ちとせちゃん、起きて」
ゆさゆさと揺らされたちとせは、なかなか起きなかったが。
「ちとせちゃん、もう放課後だよ?」
「んぅ〜、ほうかご……?あれ、私寝てた?」
「寝てたよ。政信くんのお腹の上に突っ伏して」
「ほんと?どうしよ、私としたことが寝ちゃうなんて……」
「疲れ溜まってるはずなんだし、たまには家に帰ってゆっくり寝なさいよ」
「やだ。もう政信とは離れないって決めたの」
「そんなこと言って、自分が倒れたら元も子もないでしょ」
「高山さん、悪いことは言わない。なんなら今日は俺たちが2人で残ってるから、1回家に帰って寝たほうがいいよ。なんかあったらすぐ電話するから」
「それでもいや。目を覚ますまで待つって決めたの。だから動かない」
「せめて学校は行かなくてもいいけど、家くらい帰りなさい。自分が倒れたらどうすんの?」
「それでもいいの。政信と離れたときになんかあるのが1番やだ」
「ああもう、ああ言えばこう言うんだから。私が言ってるのは、ちとせちゃんが倒れたって聞いたらもし目を覚ましたら政信くんが悲しむでしょ、ってこと。大体いつも――」
そのとき、部屋に置かれた機械が政信の容態の変化を伝える音を鳴らした。
見れば、少しずつではあるが波が強まっている。
機械が音を鳴らしたらすぐに呼べと言われていため、慌ててナースコールを押す。
『はい、こちらナースステーションです。井野さんのお部屋ですね?』
「はい、そうです。いま機械が音を鳴らしまして」
『本当ですか?今どんな状況でしょうか?』
「波が少しずつ強まっています」
『分かりました、すぐに医師と向かいます』
状況を確認したナースはすぐに通話を切り、それから程なくして医師とともに現れた。
そして機械を一目見ると。
「本当だ。政信くんはもうすぐ目を覚ますと思うよ」
「本当ですか!?」
医師の言葉に食いついたのは紛れもないちとせだった。
「ああ。このまま順調に強まっていけば、あと数分以内で目を覚ますだろう。親御さんにも連絡を入れてくれないか?」
すぐさま政信と自分の両親に連絡を入れ、そのまま政信の手を包み込み待つこと数分。
政信の目が薄っすらと開き。
「……あれ、ちとせ?どうして俺は寝てるんだ?……それにお医者さん?」
頭にはてなマークをたくさん掲げた政信が、実に2ヶ月ぶりに目を覚ました。
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おしらせ
昨日より新作の投稿を開始しております。
それに合わせて、こちらの作品の投稿日時を月・木に変更させていただきます。
新作は「姉と幼馴染と美人先輩の俺の取り合いは、正妻戦争に変わってしまった」
でございます。
寝取りとかみたいな闇的要素はありません。
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