第17話 【悲報】政信、死亡の危機 その5
映し出された政信の胃は、ほとんどが白色だった。
これが意味することはただひとつ、政信の胃のほとんどが潰瘍になっているということ。
「……
「まず、胃潰瘍になった時点で普通はかなりの痛みに襲われます。ここまで広がるまで気づかないということはないです。おそらくですが、この広さの半分くらいだった数日前から一切動けず、じっとしていても激痛に襲われていたはずです。ところがストレスと過労が同時に来たために神経がマヒして気付けなかったといったところでしょうか。正直申し上げるとなぜ痛みを感じないのか全くわからないんです。とにかく、胃の手術を致しましたので、後は回復待ちと言ったところです。ただ、一向に目を覚ます気配がなく、今後も目を冷ますことがない可能性もあることはご承知おきください」
「もう目を覚まさない可能性とは?」
「なにせ過労とストレスですので、今はまだ大丈夫ですが、今後急変することもあります。目を覚ますかどうかはご本人がどこまで生き続けたいと思っているかにかかっていると思ってください」
全ては本人の意志次第というわけである。
こればっかしはどうしようもないとはいえ、政信がもう二度と目を覚まさないかもしれないという話は、ちとせたちに重くのしかかっていた。
翌日。
吹奏楽部とダンス部では公演の延期が正式に決定し、HPなどで告知がなされた。
だからといって練習が短くなったりするわけがなく、むしろ彼女たちは前よりも熱心に練習していた。
音楽室の小さい黒板には大きく太字で、「マネージャーのためにも目指せ全国金賞!」と書かれ、政信が復帰してきたときに彼を喜ばせるためにも頑張ろうという皆の思いが渦巻いていた。
特に、倒れてから彼の存在の重要さに気づいたのもあり、部員の熱意はとんでもなく熱く燃えたぎっていた。
そんななか、ひとりだけ部活に参加しない生徒がいた。
ちとせである。
もともと政信の制御役としての地位の高さもあったが、コンクール出場メンバーには選ばれておらず、ただ公演のみの出場だった。
そしてその割には実力があったため、多少休んでも許されていた。
というか、一応ちとせも参加したのだが、あまりにも暗いどんよりとした雰囲気を垂れ流すあまり、部長直々の帰宅命令と欠席命令が下されたのである。
結局ちとせは病室に泊まり込み、他の部員や親族たちが見舞いに来たときも帰りの誘いを断っていた。
そして政信は目を覚まさず、その生活は、まもなく1ヶ月と半月を経過しようとしていた。
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