第6話 お風呂と寝室は最高の誘惑場所につき

 お風呂。

 それはおそらく恋する乙女にとって最大の難所である。

 同時に、そこの攻略を成功させればそれは男を堕としたも同然である。

 さらに言えば、そこで誰も与えることのできない至福の時間を与えることで自分だけのものになるという利点までついてくる。

 ならば何度も攻めて成功させなくてはならない、とちとせは考えた。


 では最も短時間で成功させられうる手は何なのか。


 Answer:自分の素晴らしく(いろいろな意味で)成長した身体


 という答えをわずか0.3秒でたたき出したちとせは、さっさと風呂に入った政信を追いかけて風呂へ突撃をかました。


結果。


(視点変更、ここから政信視点)

「まっさのぶ~、お風呂入るね?」


 何の断りもなく堂々と風呂の扉を開け放ち、入ってきてからの事後承諾を求めるちとせに迷わず声を荒げる。


「入ってから言うことじゃねぇ!そもそも俺が入っているところに入ってこようとすんな!」

「だって一緒に入りたかったんだもん。でも先に言うと絶対に拒絶するから」


 一緒に入りたいからと言って入ってくることが許されるなら世も末だ。

 プライバシーなんて全くもって存在しない世界になってしまう。

 そればっかりはごめんだ。

 それにスタイルが良すぎるせいでいくら湯気が充満しててもシルエットが隠しきれていない。

 これ以上一緒にいたら危険だ、そう本能で感じた俺はすぐさま風呂を出た。

 

 背後から、


「ちょっと!政信、いくら夏だからってもっとちゃんとあったまらないと疲労回復できないよ!」


 などとまっとうなことをいう声が聞こえ、一瞬戻りかけたものの。


「私の身体で洗ってあげるから早くおいで?」


 という続きの声にすぐさまリビングへと足を向けた。


 


 結局その後、若干ふくれっ面のちとせとともに寝室へと向かう。

 いかんせんあまり部屋が余ってなかったせいで、今まで俺が使ってた部屋は俺たち二人の寝室になっている。

 もちろん勉強部屋は別々で用意されているが、大量の書籍を詰め込んだ本棚があるせいで寝るスペースはこれっぽちもないのだ。


 さっさとベッドに入って寝ようとすると。

 後ろからピタッと張り付く人が一人、すなわちちとせである。

 おかげで天国にいるかのような感触が味わえる男子にとっては最高の誘惑となる成分を中に大量に詰め込んだ大変大きい果実が二つくっついてきていて大変なのだが。

 一生懸命煩悩を払おうとしていると、ふとちとせが口を耳元に近づけてきた。


「政信、あまり無理はしないで。何かあったら私を頼ってくれてもいい。私はお姉ちゃんとは違う。信じられなくてもいい、でも少しずつでいいから頼って」


 そうささやく声音はいたって真面目で、それだけ心配されているのが伝わってきた。

 とはいえ、自分があの事件をトラウマに持っていて、異性を信じることができないのもまた事実。


 もうちょっとどうにかしてちとせの不安を解かないとなと思いつつ夢の世界に旅立つ俺だった。


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 あと何話かしたらちょっとした事件が起きます。


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