第3話 復讐準備 その1
その日の夜。
21:00を回った頃、駅に降り立つ男女がいた。
そう、ちとせと政信である。
「いや〜、たくさん買ったね」
「そうね、これで明日から証拠集めに専念できるね」
「しかし、秋葉原に行けばこんなに揃うなんてよく知ってたね」
「前に調べたことがあったからね」
改めてちとせが恐ろしく感じる俺だった。
遡ること2時間。
俺たちは秋葉原にいた。
理由は簡単、浮気しやがった
当然のことながら、制裁には証拠が必要だが、彼らに気づかれないように証拠を集めたい。
そこで、特殊なカメラや盗聴器などを調達しに行ったのだ。
「とりあえず、この盗聴器を千春に仕掛けるんだよね」
「そう。お姉ちゃんの部屋の電気タップをこれに変えるの。もちろん、今部屋にあるやつと全く同じやつを用意したから、気づかれる心配はないはず」
「了解。そのうえでこのメガネを掛けるんでしょ」
「そういうこと。これで動画を取れるし、画像も取れるから」
ためしに一旦かけてみる。
「カメラが入っているせいでちょっと重めだな」
「仕方ないんじゃない?画像の方は?」
これまた試しに、あえて少し離れたところから、ちとせを撮ってみる。
「超鮮明に写ってるね、この感じならよさそう」
「そうね。これならうまく行きそう。じゃあ、明日から始めましょ。取り敢えずは1週間後にもう一回会えばいいよね?」
「良いと思う。とにかく明日から1週間、証拠を集めるよ」
そして俺たちは別れ、各々の家に帰った。
翌日から、俺とちとせはいつもどおり振る舞った。
だが一つだけ違うのは、千春と邦彦が浮気してるということだけ。
でも、それを知ってることを気づかれれば、俺達の計画は破綻する。
だから学校では、
「政信、今日はちとせと邦彦と4人でご飯食べよ」
「いいよ。屋上でいいのか?」
「いいんじゃない?邦彦くん達呼んでくるね」
そういって2人を呼んできて4人でご飯を食べることになっても。
「……」
「……」
ちとせと俺の間で会話が生まれることは(いつも通り)なかった。
ただし、それは表面上のことで。
『今日千春が家族の用事があるって先に帰ったけど。』
『何もないよ。そういえば、邦彦もなんかあるって言ってたよ。』
『今日はどこで浮気デートしてるんだ?』
『駅前のあそこに行ってみるね。』
『よろしく。結果は今度で。』
といった感じでスマホのメールアプリを使って頻繁にやり取り、もとい情報交換をしていた。
そんななか、日はあっという間に流れて1週間。
またもちとせの部屋に来た俺は、たくさんの写真とこれまたたくさんの動画が入ったUSBを、ちとせの前に積み上げた。
その数、200枚。
一方ちとせも300枚ほどの写真と、1つのUSBをおいた。
その光景に圧倒される二人。
まさかわずか1週間でここまで証拠がボロボロ出てくるとは思っておらず、驚きである。
というか、どんだけ二人して浮気してんのさ。
さすがに気づかれると思わないのだろうか。
まあ大方、気づかないほどバカだと思ってるのだろうけど。
さすがにこれを見て正気は保てないだろうと思ってちとせを見ると。
無茶苦茶凹んでるどころか、なんか黒いオーラを出しまくってるちとせがいた。
そのまま、無言の状態が続く。
少しして、いつもよりも雰囲気暗めのちとせが口を開く。
「あいつら、そろいもそろってクズだったわ。やっぱあいつら死にたいと思うまで徹底的に潰してやる」
何かとんでもないことをさらっと言ってのけた。
その声は、前よりもさらに棘のある声で、ちとせが怒り狂ってることを感じさせる低い声だった。
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