第16話 見せつけの偽デート 4-2
「ようやく着いたな」
「だね、結構遠かったもんね」
特急列車に揺られること3時間。
俺達は目的地である富士急ハイランドに到着していていた。
「しかしあれだな、事情を知らない人が見たら俺達はバカップルだな」
「それでいいんじゃない?そのほうが騙しやすいでしょ」
「そりゃそうだな、じゃあこのままで行くか」
特急の車内からずっとそうだが、俺達はずっと手を繋いでいた。
それも、あの指を絡ませる恋人繋ぎというやつだ。
当然のごとく二人は密着してしまうわけで。
「あのカップル、すごく仲睦まじいね〜」
「ね〜、私もあんな感じになってるときあるのかな?」
「そこまではいってないけど、十分あんたらも仲睦まじいよ」
とまあこんなふうにすれ違う人たちがうらやましがるほどの甘々っぷりである。
とはいえあくまで俺達は付き合っているわけではないから、褒められても微妙であるが。
「さて、まずはどこから行こうか?」
「いきなりあれ行っちゃう?」
そう言ってちとせが指さしたのは。
「マジであれ乗るの?」
「そうよ。遊園地といえばジェットコースターでしょ?」
「でもあれはむっちゃ怖いやつじゃなかったか?」
「それがいいんじゃない」
超有名、その名は"FUJIYAMA"。
世界記録にも認定されているほどのジェットコースターで、無茶苦茶怖いやつ。
「ならいいけど、でもやっぱ怖いわ」
「じゃあこうしていれば大丈夫でしょ?」
そう言っておもむろに手を絡めるちとせ。
そしてそれをいいことに堂々とくっつく俺。
傍から見たらただのバカップルでしかない。
「というか、おじさんが言ったとおりになったな」
「なにが?」
「まず、後ろから千春たちが羨ましそうな顔をして尾行しているでしょ」
「ホント?ならもっとくっついたほうがいいかな?」
「それはしなくていいと思うよ。なぜなら2つ目に、世間一般で言うところのバカップル状態だからね、俺達」
「なら充分かな?」
「充分です。これ以上やったら嫉妬の目で見られるよ?」
「じゃあここまで留めておくわ。さぁ、行きましょ?」
「分かったから少し落ち着け。何もFUJIYAMAは逃げないから」
なぜかウキウキルンルン状態のちとせと恋人繋ぎをしながら列に並ぶ俺達。
それから20分後。
「何これ、こんなに怖いなんて聞いてないんだけど」
「そう?思ったより楽しかったぞ」
「これで子供が乗れるっておかしいよ。絶対に乗せちゃまずいでしょ、これ」
「でも公式には乗れるけどな」
すっかり立場が逆になった俺達だった。
結局、ちとせはあまりの怖さに膝が震えてしまった一方、俺は純粋に楽しんでいた。
何より、ジェットコースターはこのくらい怖いほうがいいという究極の事実に気づいてしまったのだ。
「あそこのベンチに座ろうか」
「そうしましょ。ちょっと今歩けないもの」
そうしてベンチまで移動し、ゆっくり休憩する俺達だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます