第21話 復讐という名の地獄落とし 後編 その1

 時は過ぎ去り偽デートの翌日。

 俺は朝の8時だというのにも関わらず、すでに高山家を訪れていた。

 今日は千春潰し第2回戦(スイッター生配信あり)である。

 開始時刻は10時だが、その前に機材の準備やらなにやらをしなくてはならない。

 スマホスタンドをテーブルの真ん中に設置し、充電ケーブルでつなぐ。

 それから動画撮影モードに切り替え、顔が映らないことを確認。

 それらが終わったところで、ちとせが飲み物を持ってきてくれたので一息で飲み干す。

 なにせ家に来てからかれこれ30分以上飲まず食わずで動いていたのだ。


「そんなに喉乾いてたの?言えば淹れたのに」

「忙しかったからな。いかんせん9時半から配信開始だし」


 そう答えたところで俺のスマホが電話がかかってきていることを知らせる。

 発信元は『部長』となっている。

 あとがめんどくさいので出ることにする。


「もしもし?」

『もしもし?政信くん、今日って来れる?』

「今日まで休むって言いましたよね。人の話聞いてました?」


 その声に混ざった怒気に気づいたのか、先程までの明るい声はなくなる。


『いやあのね、そろそろ出てもらわないとこっちもキツイんだよね。来週からは出れる?』

「来週から復帰するって言うたよな。なんで聞いてへんの?」

『確認の為だから。じゃあ月曜ね』

「なんども言うとるやろが。じゃあ忙しいから電話切りますね」


 そう言って迷わずぶった切る。

 すると、その様子を見ていたちとせが疑問をぶつける。


「政信、そんなにイライラする人だったの?」

「なんでそう思ったの?」

「だって最初は口調が丁寧だったのに途中でタメ口になってるし、キレてるときに出る関西弁が混ざってたよ?」

「関西弁出てた?マジか、もっと気をつけなきゃな」


 とそこにおじさんとおばさんがやってきた。


「準備は終わったかい?」

「ええ、完璧です。あとは時間になったら起動するだけですので」

「ならば今日の打ち合わせといこうか」


 そう言うと、椅子に座るおじさん達。

 おじさんとおばさん、その向かいに俺とちとせという構図だ。

 着席するなり、おばさんが口を開く。


「遊園地デートはどうだった?」

「はい?」

「あれ、昨日行ったんじゃないの?」

「ああ、行きましたね。千春達が着いてきているのは確認できましたよ。だんだん怨嗟の視線が強くなっていったのですぐに気付けました」


 これは本当である。

 ぶっちゃけ、富士急ハイランド駅についた時点で視線が凄かったから、普通に気づけた。

 

「そう。ちとせとはどうだったの?」

「ちとせとですか、ちゃんとバカップルを演じられたと思いますよ」


 その返答にガクッとなる高山一家。

 なにか変なことでも言ったかな、と思ってると、しばらくして再びおばさんが口を開く。


「ちょっと話が変わるけど、政信くんは誰か好きな人とかいるの?」


 若干イラっときながら、正直に答える。


「一人もいませんし、誰かと付き合う気もありません。あいつのような奴の正体を見抜けませんでしたし、もう二度とああいう思いはしたくないので、たぶん一生恋人は作りません」

「もし理想の女性に告白されたら?」

「だとしても絶対に即振ります。正直言ってあまり信じきれないので」


 そこまで答えると、ちとせとおばさんが突如立ち上がった。

 

「ちょっとごめんね、5分くらい席を外すわ」


 そう言って部屋から出ていった。

 おじさんはと言うと、


「政信くん、君は正直すぎるぞ」


 忠告を頂いた。




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 政信くんは女性恐怖症です(ただし自覚なし)

 

 ざまぁ好きとバカップル好きはぜひレビュー&コメントよろしくお願いします。


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