第27話 誰か私にクスリを その1

 酒田美祐(さかた みゆ)は、教師歴3年。

 まだまだ新人である。

 しかしながら、その性格と子どもたちへの接し方により、ある程度の人気を得ていた。

 どちらかといえば、教師と教え子というよりは先輩後輩のような距離で話す。

 それが生徒の心を鷲掴みにしていた。

 もっとも、当の本人はといえば、ただただ面倒くさがりなだけだったが。




 そんな彼女は今、頭を抱えていた。

 原因は、自分の受け持つクラスにいるあるカップルである。


 1日目の夜、普通の修学旅行では考えられないような高級ホテルである某プリンスホテルの26階の琵琶湖畔の一人部屋にてゆっくりしようとしていた彼女のもとに。


「先生!助けてください!!」


 ひとりの女子生徒が半ば駆け込むようにしてやってきた。


「なんだ、川口。そんな焦って」

「聞いてください先生!ちとせちゃんが、ちとせちゃんが……!」


 あまりにも焦っているせいか、まともに話せていない彩希。

 その彩希に対し、酒田は冷静に対応する。


「落ち着け、川口。まずは深呼吸だ、吸って〜、吐いて〜。落ち着いたか?」

「ふぅ〜。はい、なんとか」

「そうか。で、高山がどうかしたか?」

「そ、それが、ちとせちゃんが嫉妬して……」

「嫉妬して?」

「この修学旅行中から、こ、子作りするって宣言してきたんです!」

「……」


 彩希の口から飛び出たトンデモ発言に固まる酒田。

 一通り固まったあと。


「はあ!?」



 あまりにもありえない状況に、思わず叫んでしまう酒田だった。







「で、どういうことだ、川口?」

「それがですね、――」


 彩希の話を要約すると。

 今日の夕食前がことの発端だったようだ。

 たまたまとはいえ、井野の昔の友人、しかも女子に再会し、ふたりで盛り上がってしまったという。

 それに嫉妬し、謎の危機感を覚えた高山が、今日から井野を襲うと宣言したそうだ。


「なんだよ、あいつららしいといえばあいつららしいが……」


 明日と明後日の宿は二人部屋だから、別にそこまで汚さなければ何してくれてもいいのだが。

 残念ながら今日は4人部屋である。


「ったく、明日まで我慢できねぇのかよ……」

「できないと思います、ちとせちゃんなので」

「だよなぁ。……はぁ、見回りは特にしないからいいけど、ほんとはダメだからな」

「ええ、わかってます」

「本人じゃねぇだろ、川口は。……川口と大塚には予備部屋の鍵渡すからそこ使え」

「予備部屋、ですか?」

「ああ。うちの学校の宿泊階は全室抑えてあるからな。とりあえず私の隣の部屋使え」

「分かりました、ありがとうございます」

「それと、今から私がお前たちの部屋に行くから、私が来るまでそういうことは絶対にするなと言っておけ」

「了解です!」

「じゃ、さっさと行け」


 言うが早いか自室へ向かう彩希。

 それを確認した酒田は、思い切り叫んだ。



「だああ!めんどくせえんだよお!!」







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 ここ書くのに悩みに悩みまくり、なかなか投稿できませんでした。


新キャラである先生の名前に迷い、正確に迷い。

そもそもどういう流れにするかすら怪しかったのでした。


今日から再開です、よろしくお願いします。


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