第26話 ちとせと政信 その2

<Side 政信>


 一言で言えば、最悪だった。

 あきちゃんに久しぶりに再開したのは純粋に嬉しかった。

 しかし、問題はそこからだった。

 ちとせはあきちゃんに嫉妬し、あきちゃんはそれを煽る。

 いくら弁解しようとしても、あきちゃんが火に油を注ぎまくるせいで、誤解を解くことができぬままどんどん疑惑が大きくなり。


 結局、楽しい夕飯のはずが、全く口を開かない寂しい夕飯になってしまった。

 ちとせもさすがに頭にきたのか、さっきから一回も目を合わせることがができない。

 そして、いつもと違う雰囲気を感じ取ったのか。


「いつもと2人の間に流れる空気とかが違うと思うんだけど……」


 彩希さんに思い切り疑われた俺たち。

 動揺しながらも必死に隠そうとした俺達は。


「そ、そんなことないよ!?」

「あ、ああ。別にそんな喧嘩とかはしてないぞ!?」


 明らかに一発で嘘と分かるレベルの返しをしてしまった。

 幸い、彩希さんはすぐにその身を引いてくれたものの。


 その後も俺とちとせの間には微妙な雰囲気が流れたまま、1日目の夕飯を終えた。






<Side ちとせ>


 周りから、声が聞こえる。


「ちとせちゃんと井野くん、どうしちゃったんだろう?」

「ね?いつもならもっとイチャイチャしてるのに……」


 私達の関係を心配してくれる人もいれば。


「おい、これ、もしかして高山さんフリーなんじゃね?」

「マジかよ、だったらもしかしたら俺たちだって――」


 私を狙ってる不届き者もいる。


 それを聞く私は、すごく不機嫌だった。

 私をそういう目でしか見てないのが丸わかりだから。

 そして何より。


 私は、高砂さんに嫉妬していた。


 政信と過ごした日々の充実さは、間違いなく私のほうが多い。

 でも、政信とテンポ良く話す高砂さんに嫉妬し、そして焦りを覚えた。


 私はこのままだと捨てられてしまうのではないか。

 そう遠くないうちに、政信は高砂さんと添い遂げる道を選んでしまうのではないか。


 一度考え始めた妄想は、とまらない。


 どんどんひどい方向へと、想像は進んでいく。


「――ちゃん、ちとせちゃん?」

「――!何、彩希ちゃん?」

「ちとせちゃん、何か考え事?すっごい額にしわが寄っていたけど」

「ううん、何でもない」

「ほんとに?――政信くんが心配して声かけてきたの、ちとせちゃんに何かしちゃったんじゃないかって。迷惑かけちゃったから自分から話しかけるわけには行かないって」


 彩希ちゃんが私の耳元でささやいた言葉。

 

 それが私を覚醒させた。

 もとよりそのつもりだった。

 それが1日早くなるだけである、なんてことはない。


「彩希ちゃん、ちょっといい?」

「いいよ?」

「あのね、今晩なんだけど――」


 もう迷わない。

 わたしは今日、


 たとえいい、もしそうならむしろだ。











//////////////////////////////////////////////


 危険な香りがしてきてますね……


/////////////////////////////////////////////

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る