第17話 最終戦 その1

 翌日はいつもどおりに過ごし、迎えた当日。


 高山家には張り詰めた空気が流れていた。

 俺、ちとせ、両親に義両親、それに武弥と彩希。

 あとはここに元カノ達が到着すれば、いよいよ最終戦が幕を開ける。

 いい加減あいつらと喋るのも顔を合わせるのも大変面倒くさい、というか殺意が抑えきれなくなって来ているので、そろそろ根本からその自信をポッキリ折ってやりたい。


 そんな思いは俺もちとせも一緒なようで、俺たち2人を筆頭に殺気をばらまいていた。


 普段の怒ったとき以上の殺気をばらまく2人に怯える武弥と彩希。

 しかし、本性を知る親たちはのんきなもので。


「ちとせも政信くんもまだ全然本気じゃないわねぇ」

「さすがに当人がいないから落ち着いているんでしょ。私達にそっくりだもの」

「そうよ、だって前回のときのほうが今に比べれば怖かったもの」


 母親たちの普通の会話も、武弥達からしてみればとんでもない宣言である。

 今すでに滅茶苦茶怖いというのに、それがまだまだだと言うんだから、その怖さは想像を絶することくらい、容易にわかる。


「そういえば政信くん、例のアレ準備しなくていいの?」

「今回は結構直前で良さそうです。いきなり始めるんで」

「なるほどね。……前置きなしで行くのね」

「そういうことです。面倒くさいんで、開始10分前から前もって作っておいた画像垂れ流しますが」

「じゃあだいだい30分くらい前から準備しておけばいいのかな?」

「そうですね。全部設置して開始すれば、開始時刻が彼奴等が来る予定の5分前なのでちょうど良いかと」

「ふーん。政信、今回は前回ほど入念には準備しないんだね」

「色々あるけど、やっぱり面倒くさいんだよ。それに、配信さえできればいいし」

「そっかぁ。……ほんとだったら今日はデートの日だったのにね?」

「ホントだな。予定じゃ今日は久しぶりにちょっと遠出するつもりだったのにな」

「河口湖とか?」

「違う違う、最初の予定だと今日は後楽園の遊園地だったんだよ。まあでも、来週にしたおかげで超有名ネズミの帝国に行けるんだから」


 ある意味千春達のおかげである。

 当初よりも豪華なデートになるのだから。


 だからといって、許すつもりは毛頭ないし、手加減するつもりもさらさら無いわけだが。


「政信、お相手さんはいつ来るんだ?」

「敬称なんかつけなくていいよ。クズどもでいいから。来るのはあと40分くらいだな。その間に確認してきたいことがあって」

「「確認してきたいこと?」」


 武弥と彩希の声がかぶる。


「ああ。2人が持ってきてくれた証拠だよ」

「証拠か。……でもこれ親の前で広げていいものなのか?」

「……まさか」

「一応こういうのが――」

「「ぎゃあぁぁぁ!」」


 俺たち2人が思わず悲鳴を上げてしまったその写真は。


「あら、これ学校内よね?」

「そうですよ?」

「ふふっ、ふたりとも随分とお熱いのねぇ〜。コレより先には進んでないの?」

「「進んでない!」」


 放課後の空き教室で、キスしてるシーンだった。

 なんでその写真があるのかは別として。

 恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。

 いくら我慢できないからってやりすぎたと思ったやつである。


 ……もっとも、その後もしょっちゅうやっているうちに毎日教室でするようになったとかは内緒だ。





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 本日から毎日投稿開始します。

 期間は1月いっぱいです。

 ラストスパート行きますよ〜!


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