第50話 いざゆかん、神戸港(の近く) その2

 ホテルオークラ神戸。


 神戸港の近くに(というかすぐそば)にドン、と建つ立派なホテルである。

 そもそも修学旅行で宿泊先になるようなホテルではない。


 それだけ格式高く、凄いホテルなのである。


「やばい、今更だけどすげぇ緊張してきた。どうしよ……」

「どうしようもこうしようもないじゃない、宿泊先はここなんだから」

「でもさ、やっぱり俺たちただの高校生がこんな凄いところに泊まっていいのか本当に疑わしく思えるよね……」

「それは激しく同意するわ。……外も意外と寒いし、さっさと入っちゃいましょ?」


 ちとせに急かされるようにして、ホテルの入口へと向かう。

 エントランスから入って少し行ったところにロビーがあり、そこで担任のチェックを受ける。


「ほれ、部屋の鍵だ。高山と井野はこっち、川口と大塚はこっちな。夕食は集合時間が10分早くなるのと、あと集合場所はここだそうだ」

「わかりました、夕食時刻の変更、ですね?」

「そうだ。……カメラなどを持ってくることをおすすめします、と言っていたぞ」

「カメラ、ですか。……写真とか動画ですかね?」

「おそらくな。我々もいまいちよく知らないんだ、コレ以上のことは何もわからんぞ」


 先生ですらわからないことを、俺たちが分かるはずもない。


 素直に鍵を受け取り、エレベーターで上がる。

 上がったところのエレベーターホールに、朝トラックに積んだ大きな荷物がまとめて置いてあった。

 そこから自分のキャリーケースを取り、部屋へと向かう。

 エレベーターホールから右に進み、角を曲がってまっすぐ進み、次の角に到達する。


「俺たちが角部屋で」

「俺と彩希がそのとなりか。……向き的には2部屋とも海側だな」

「そうみたいだな。……じゃあまた夕飯時に」

「おけ」


 武弥と別れ、ちとせと一緒に、俺たちの部屋に入る。

 電気はついていないが、視線の先にある窓から見える幻想的な光景に、思わず言葉を失う。


 窓の外には、神戸港の綺麗な夜景が広がっていた。

 停泊しているクルーズ船や、観覧車などが作り上げるその光景は、圧巻の一言しか思い浮かばないほど。


 神戸の夜景は素晴らしいというのは知っていたが、こんなにも凄いとは思わなかった。


「ちょっとさあ、電気つけずに写真撮らん?」

「それわたしも思った!撮ろうよ、せっかくだし」


 それから数分の間、俺たちの部屋の中には、シャッター音が鳴り響いていた。




 夜景撮影が一段落したところで、カーテンをつけて電気をつける。

 まずは部屋着に着替える。

 なにせ格式高いホテルだ、変な格好をするわけにはいかんのである。


 その後はひたすら荷物をまとめていく。

 旅行誌の差し替えとか、冷やしておきたいやつを冷蔵庫に入れたり、お土産の整理をしたり。


 ようやく一段落する頃には、もう時間が迫っていた。


「やばいやばい、もうすぐ時間だよ」

「ほんとだ、確か10分早くなったんだもんね?」

「そうそう。……カメラ持った、よし行こう」


 愛用のカメラ(動画撮影もできる)を持ち、ちとせとふたり、ロビーへと降りる。


 ロビーに降りてから少ししたところで、全員が揃う。

 そこにホテルのスタッフが現れて。


「それでは皆様、私についてきてください」


 ホテルのスタッフに先導され、上の階へと連れて行かれるのだった。







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 先日、偶数日に投稿するとお知らせしましたが、執筆時間が足りないため、4日ごとの投稿に変更します。

 次回の投稿は8日です。


 朝令暮改になってしまい、申し訳ありません。


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