第20話 超高層ホテルと恋敵 その3

 さっさと部屋着に着替え、制服をハンガーに掛けて吊るす。


 食事の時刻のおよそ40分前くらいに降りることにしていたので、部屋を出るリミットまではあと20分ほど。

 その間に何をやるかという話だが。


「トランプしたからこんどはUNOにしよう!」


 と言うが早いか、彩希さんが準備を始めたので、UNOに決まった。

 なお、これもまたよく勘違いする人がいるが、これもやはり心理戦である。

 俺とちとせは基本負けなしでここまで生きてきていた。

 だから。


「よ〜し、始めよっか!」

「+地獄だけは勘弁だな」

「ど〜したもんかねぇ……」

「やるからには本気でやるよ……」


 お分かり頂けただろうか。

 俺とちとせだけ雰囲気がおかしいのである。

 傍から見たら、殺戮を始めようとしているバーサーカーである。


「……ちとせちゃん?政信くん?」

「彩希、なに?」

「あのさ、これって、ただの遊びだよね?命がけの戦いとかじゃないよね?」

「さあ?ただの遊びだと思うならそう思っていれば?」

「……どうしよう、ちとせちゃんがなんか怖いよ……」


 これである。

 他のプレイヤーが怯えるくらいの空気を出しているのである。


 トランプとUNOは絶対にこの面子ではやらないようにしようと決意する、武弥と彩希であった。




「+2」

「+4」

「+12」

「+8」

「+6」

「+4」

「……+36枚か……」


 俺→ちとせ→彩希さん→武弥の順でやっていく。

 かまをかけるつもりで+を出したところ、見事に彩希さんが引っかかる。


「嘘……、わたしこんなに弱くなかったはずなのに……」

「そりゃ対戦相手考えなさいよ。私と政信だよ?こういう心理戦は大得意だもの」

「そんなぁ〜!」


 いくら嘆こうと、俺たちが手を緩めることはない。

 結果、ちとせが1位抜けし、その直後に俺が抜けた。


 そこから始まった、イチャイチャ9割のUNOを見る気にはなれず、俺とちとせは先に下に降りることに。


「先降りてるから。時間間違えないでね。あと、戸締り忘れないように」

「はーい」


 こうして俺は、後に大変後悔する選択をしていたのであった。




 そんなことを知る由もなく、エレベーターホールへ。


「で、ちとせさん?」

「何?」

「明日、あの子達ってたしか学校休みだよね?」

「そういえばそうだね」

「来るんでしょ?」

「え?」

「あの子達が来るんでしょ?」

「さぁ〜、それはどうかな〜?」


 またものらりくらりとはぐらかされてしまうのだった。

 もっとも、態度を見た感じほぼ確実に会うことになりそうではあるが。

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