第35話 予定変更はつきもの(ただし個人旅行に限る) その2
30分ほどかけて荷造りを終わらせる。
今日の宿泊先に送る大きな荷物と、今日一日持ち歩く小さな荷物に分ける。
分け終わったら、荷物を一旦部屋の外に出す。
出し終わったところで念のため部屋の中をチェックする。
「ベッド下も机やソファの下も、風呂もトイレもクローゼットも中は空っぽにしてあるよ」
「よし、オッケー。じゃあ先生呼びに行こうか」
「それはしなくていいと思うよ。ほら」
そういってちとせが指さした先には、ちょうど部屋から出てきたと思わしき先生が。
先生もすぐにこちらに気づき、気持ち駆け足でこちらにやってくる。
「部屋のチェックでいいな?」
「はい。一応僕たちの方でチェックは済ませてはあります」
「了解。では少しその場で待機するように」
先生はそう言い残すと、部屋の中のチェックをする。
「よし、忘れ物や目立つ汚れはなし、と。カードキーは?」
「こちらに」
「はい、カードキー返却完了、と。昨日入ってきたドアを出たところにトラックがあるから、そこに大きな荷物は乗せること。今日持ち歩くものは朝食会場に持っていくこと。朝食会場は昨日の夕飯と同じな。なにか質問あれば」
「特にないです」
「なにもないです」
「大丈夫です」
「全て把握しました」
「ならよし。では言ったとおりに移動」
先生の許可を得て、4人で下に降りる。
ホテルの出入り口から出たところにあるトラックに大きな荷物を積み込み(先生に預ける形だった)、そのまま朝食会場へ。
昨夜とは違い、4人の仲(とりわけ俺とちとせ)はすっかり元通り、いや元よりも深まっており、話が弾む。
もっとも、俺たちの間でかわされるのは今日の行程の話だが。
なにせ急な変更である、今まで話してなかったところも行くことになるわけだから。
そんなこんなしてるうちに朝食の時間は終わり、いよいよ出発の時間となる。
「注意事項を説明するからよく聞くように。まず制服を着て動くということはこの学校の名を背負っているということと同じです。ひとりの軽率な行動が学校の印象を著しく下げます。絶対にそういうことをしないように。それから今日の宿泊先にはかならず決められた時間内に到着してください。万が一電車の遅延などで遅くなりそうなら電話をすること。それから今朝話があったとは思いますが、安全とは言い切れないので保津峡下りには行かないこと。これらを守ってください。ではクラスごとにチェックを受けた班から出発」
注意事項の説明が終わり、担任のチェックを受ける。
いの一番にチェックを受け、そそくさとホテルを出て、道路を歩いていく。
「まずはどこまで歩くんだっけ?」
「この駅だよ」
「……なんて読むの?」
駅名が読めないちとせ。
行程表には、『膳所駅』と書いてある。
「これで、ぜせって読むらしい」
「ぜせ?なかなか読みづらいね〜」
「ほんとだよ。で、ここから東海道線、あ違った琵琶湖線の普通列車に乗る」
「琵琶湖線?」
「東海道線のことを米原〜京都は琵琶湖線って言う愛称で呼ぶんだ。駅とかの案内は琵琶湖線って書いてあるけど東海道線とか東海道本線とは書いてないから、知らないと――」
「頭が混乱しちゃう、ってわけか」
「そういうこと。電車まで時間があるわけでもないから急ごっか」
あまり時間がないのを確認し、俺たち4人は膳所駅まで早歩きで歩いていくのだった。
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色々と現実では忙しい日々が続き、連載が止まっておりました。
本日より再開致します。
なお、暫くの間は隔日での投稿になります、ご了承ください。
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次回の投稿予定……9月13日(水)18:00頃
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