第26話 最終戦 その10

 手始めに、すっと手のひらを千春の右頬に添える。

 そして、左手で頭を押さえつけ。


 シュバババババババババッ!


 残像しか見えないような素早い動きで右手を振り続け、両頬を叩き続けること30秒。

 まだまだ序の口ではあったが、すでに痛みで涙目になる千春。


「おいおい、まさかこの程度で音を上げるわけじゃあるまいな?」

「さ、さすがにこれで負けるわけにはいかないもの。認めないわよ」

「そうか。いい心がけだ。……邦彦、お前は容赦しないからな」


 邦彦に宣言すると、再び千春のときと同じようにする。

 ただし今度は右手を拳にする。


 バババババババババッ!


 先程よりも高速で振り、かつ拳に力をより込める。

 そして最後に。


 ゴスッ!


「ごふっ!カハッ!……何しやがる……」

「何しやがるって言われてもねぇ。容赦はしないって最初に言っておいたと思うけれど」


 みぞおちに拳を叩き込んだ。

 千春にもやってやりたかったが、そっちは流石にまずいので諦める。


「これでもみぞおちは一発しか入れてないぞ。その程度で文句言うな。……それとも最初から地獄コースが良かったか?」

「んなわけあるか!」

「口のきき方がなってないようだね。貴様は今立場上この場の中で一番下だ。次から同じことやってみろ、ただじゃすまないからな」


 俺の漏れ出す殺気に気づいたのか、コクコクと必死で頷く邦彦。


「じゃあまず1個聞こうか。なぜお前たちはあんな嘘をついた?」


 完全ブチギレ状態なため、一切容赦するつもりがない。

 1回なにかしら攻撃を加え、1個質問をする。

 そのサイクルで質問がなくなるまで繰り返す。

 もちろん、変な返事をした瞬間に追加の攻撃をする。

 そして当然のごとく、このことを何も言っていなかった。


「それはもちろん、真実を世に知らしめるためだよ」

「ほう?あまり嘘を言うようだと容赦はしないからな?そこだけはよぉ〜く覚えておいた上で回答してくれよ?」

「もちろん最初からそのつもりで言ってるわよ。いつまでもあんた達の言うことを信じてもらっていては困るもの」

「自分たちは何も悪くないとでもいいたいのか?」

「当たらずとも遠からずってところね。あんた達だって悪い事してるってのを知ってほしいだけよ」

「悪いことってのは何だ?」

「自分たちだって浮気してるし、脅迫するし。あとは暴行を加えてきたときもあるしね」

「白々しくよく言うねぇ。言っちゃ悪いがお前のその指摘は1つ残らず外れているぞ。脅迫や暴行ってのは全部元を辿ればそっちが悪いわけだし、そもそもただ警告しただけだからな。まさかその心当たりがないとは言うまい?」


 ぐぬぬ、と言葉に詰まる千春であった。

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