第25話 最終戦 その9

「……やっぱり勝てないか」

「そりゃそうよ、あんたと違ってバカじゃないんだから」

「クッ……ククッ……フフフフ……アハハハハハハ!」

「な、何急に笑っているの?」

「そりゃ、フフッ、面白いからだよ」

「面白いところなんて1個もないでしょ?」

「何いってんだ?お前らのその反応まじで面白いんだよ」

「何が面白いのよ?」


 いつまでも笑っている俺を前に、訝しみだす千春。

 いつまでもズルズル引きずってみたいが、流石に面倒くさい自体になりうるのでネタバラシすることに。


「お前らがずっと騙されているのに気が付かないからだよ。これで俺はお前らにいくら攻撃しても大丈夫になったからな。むしろお前たちは俺を攻撃すればするほど痛い目にあうぞ?」


 悔しい演技を止め、反撃に出ると、千春達は愕然としていた。


「だいたいお前ら、俺がわざわざ殴られてやってるんだからおかしいと思わないわけ?」

「普通思わないでしょ!」

「さっき君たちが反応する隙を与えずに殴った人があの程度避けられないとでも?」

「じゃあ何だって言うのよ!」

「お前らそのくらい頭使えよ。人に暴行を加えたら暴行罪。ただし、先に攻撃された場合は正当防衛になる。こうなれば、たとえ死んだとしても罪が軽くなるんだよ。こっちは命の危機にあったわけだからな」


 何を考えてわざわざやられに行ったのか。

 すべてはこのためである。

 ”先に攻撃をされた”のであれば、その後反撃しすぎて相手が死んだとしても正当防衛によるものとして処理される。

 法律を気にせずついうっかり暴行してしまっても問題ないという状況に早変わり。

 殴られた瞬間は千春達が有利なように見えるが、実際のところは俺が大変有利なのである。


 そのことにようやく気づいたのか、顔が藍染のように青く染まる千春達。


「ま、まさか……」

「まさか?」

「私達をわざと騙したわけ?」

「だからそうだと言っているだろ。1回で理解しろよ」

「この卑怯者!嘘つき!人に嘘つくなんて許せない!」

「先に嘘ついたのはそっちだろうが。嘘つき返してやっただけだからな。お前らにとやかく言われる筋合いはねぇよ!」


 今までのようなおとなしい俺はもういなかった。

 未だにそれに気づけていないのか、俺が怒鳴ったことに目を見開き、固まる千春達。


「これで貴様を痛めつける名目ができたからな。2人とも。とりあえずまずは甘めにやってやるよ」

「やめて、それだけは勘弁して」

「いくらなんと言っても無駄だからな。自分の行いを悔い改めろ。お前が悪い」


 ぎゃあぎゃあ喚く千春をガン無視し、報復を開始した。

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