第27話 最終戦 その11

 言葉に詰まったまま話し出さないので、もう話は終わりと判断し、次のステージへと進む。


「で、もう話さないなら次の質問に行っていいよな?」

「……」

「よしわかった、進もうか」


 同じことをするのはつまらないし、何より自分の怒りが収まらない。

 さっきは上半身、それも頭部に向けてやったわけだが。

 かといって場所を間違えると今度は胎児に影響が出てきてしまう。

 とっさに考えた末、攻撃場所を決めた俺は。


「ま、政信?」


 千春の困惑している声をガン無視し、ツカツカと歩み寄り。


 ドサッ!


 千春が、そしてあまり間を置かずに邦彦が膝から崩れ落ちる。


「政信……、何をした……」

「膝に手刀してやっただけだよ。立ってくれていてよかったよ、おかげでやりやすかった。……ところで、まさかこれで終わりだとか思ってはいないだろうね?」


 途端、顔が青くなる2人。

 さっきのは膝に軽く手刀を当てただけ。

 いわば”膝カックン”の応用である。

 その程度で許してやるほど優しくはないので、本格的な攻撃に入る。


 今回の標的は足。

 ただし立ったままだと危ないので椅子に強制的に座らせた。


 足を狙うと一口に言っても色々な手段があるわけだが。

 今回はまず、太ももを両手で包み込む。

 このときに親指を裏側に当てる。

 そして。


 グリグリグリグリ。


 親指をネジのようにひねりながら押し込んでゆく。

 最初の方こそ痛くないが、指が深くなっていくにつれて悲鳴を上げ始める。


 ちとせに声が似ていることもあり、力を緩めそうになるものの。

 千春がちとせに向けてしてくれやがったことは1個も忘れることがないし。

 何よりも自分の目線の先にはちとせ本人がいるわけで。

 その目は期待でキラキラしており、何に対する期待かを瞬時に感じ取った俺は。


「ちとせ、やるか?」

「やる!」

「じゃあそっちで座り込んでるヘタレのボンクラの方をやってくれ」

「……ほんとに?」

「本当さ。ただし片方だけにしとけよ?合計で2本ずつあるからな、1本ずつお互いにやるってのはどうだ?」

「それいいねぇ!」


 俺もちとせも、2人に対しての恨みはでかい。

 千春に関して言えば。

 俺から見れば浮気しやがった元カノだし、ちとせからしてみれば元カレと初恋相手を奪った憎き姉であるわけだし。

 邦彦に関して言えば。

 俺からすれば俺の元カノの間男であり、裏切られた友人で。

 ちとせからすればいいように扱われた元カレで。

 そんなだから2人に対しての恨みはとてつもないものがあり。


 ましてやさっきまで散々に煽られてきたわけで。

 結果。


「グガアァァ!」

「ギャアアア!」


 2人の悲鳴が部屋中に響くなか、とにかく一切力を緩めない俺たちだった。

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