第28話 最終戦 その12

 それからおよそ2分後。

 部屋の中には死屍累々の体の2人がいた。

 残念ながら、まだ片足しか終わっていないのにこのざまである。

 質問はあと1個だけだし、ここで思う存分痛めつけてやりたい。

 だから俺たちは。


「よし、変わろうか」

「そうね。今度も2分?」

「2分でいいか。その後があるしな」


 場所を交換すると、先程とは反対側の太ももをこれまた同じように包むと。


 グリグリグリグリ。


 再び親指をねじ込んでいく。

 当然のごとく悲鳴を上げる2人。


「やめて、もうしないから!」

「すまなかった、俺が悪かったからもうやめてくれ!」

「うるせぇよカスども。もうしない、って言ったってどうせまたやるだろ?それに俺が悪かったって言うなら反省して態度で示せよ。できてないんだから黙ってろ」


 必死の求めをバッサリと切り捨てる俺。

 そして。


「ごちゃごちゃ言ってんじゃないよ、アホ姉」


 静かに言い放ったかと思うと、今まで以上に力を入れていくちとせ。


「ああ、ちとせ、骨が折れたり筋肉とかが切れたりしない程度にしといてよ?あとのお楽しみがなくなっちゃう」

「そっか……面倒くさいけど加減だけはしようかな」

「かな、じゃなくてしてよ?」

「はーい」


 不満そうな返事をし、何故か力を加えていくちとせ。

 ちとせのことだから、多分ギリギリのところで止めてくれるだろうと思いつつ、俺も力を緩めずに保つ。


 やがて両足が終わる頃には。


「ッ……」

「あしが……」


 あまりの痛みにろくすっぽ声が出ない人が誕生していた。


 だからといってこれで止めるなんて、これっぽっちも言うつもりはないわけだが。


「ちとせ、最後は派手にやりたいでしょ?」

「もっちろん!とっても派手にやりたいな〜」

「その願い、この私が叶えて差し上げよう」

「ほんと?」

「本当だよ。ただし狙うのは足と腕、それに肩より上だけね?」

「胸のところは?」

「ギリ許容。……ああ、邦彦はどこに何しても大丈夫、死ななければ。」

「ふーん、あくまでクズ姉だけってことね?」

「そういうこと。あいつはほら、赤ちゃんの問題があるからね、さすがにそれだけは避けないとだし」

「ん。じゃあ私先に邦彦から行くね?」

「いいよ。じゃあ5分ずつでどうだ?」

「ん〜、15分はほしいな」

「尺がないから10分」

「10分か……、まあそのくらいならいっか」

「よし、じゃあ10分後に交代な」


 10分間ずつ、好きなように調理する。

 まずは千春だ。


「……こんどは何やろうっていうの?」

「そうだな……、顔は一回やったし、足は今膝と太ももは済んじゃったしな。……あと1個質問するつもりだけど、ちゃんと隠さずに答えられるか?」

「あんた相手に教えるわけ無いでしょ。聞かなきゃわからないんだから」

「そうか、つまり隠すということだな」


 そう言って目の色を変える俺。


「いや、そそそういうことじゃなくて、その、隠すかどうかは言わないけど、隠すことはしないって言う話で――」

「じゃあ最初からそう言えばいいだけじゃねぇか。本当のところはどうなんだ、言ってみろ」

「ッ、言うわけ無いでしょ!」

「ならば言わせるまでだな!」


 即座に、千春の頭にげんこつを落とす俺。

 痛がる千春と、邦彦を攻める楽しそうなちとせを横目に見ながら、俺はもう一発、こんどは軽めに落とすのだった。

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