第29話 最終戦 その13
げんこつ2発。
いくら本気でなかったとしても痛いものは痛いらしい。
現に。
「ッ痛!何すんのよ!」
痛みに耐えかねたのか、キレる千春。
最も、俺の手加減した程度でそんなになっているのでは、ちとせ相手に耐えることはできないだろう。
なにせあのちとせである。
すでにこの会議が決定した段階で、一切手加減を加えるつもりはないと宣言していたし、現に邦彦はさっきから悲鳴も上げられないほどの痛みを加えられ続けている。
「何すんの、じゃねぇんだよ。おまえの置かれている状況をわきまえろって何度も言ってきただろうが。それをちゃんと考えもしないで行動してるのが悪いだろ」
「んなっ」
「だいたい、俺がどんだけ手加減してんのか分かってんのか?」
「手加減なんてしてないでしょ、こんなに痛いんだから」
「お前はつくづくバカだな。俺がこんなに非力なわけがないだろバカ。この程度じゃちとせよりも弱いぞ?」
「ひっ……」
さらっと言ってしまったが、暗にちとせのほうが痛いということを匂わせてしまったせいか、千春の顔がひきつってしまった。
「で、あと残ってんのは足の下のほうか、肩より上しかないんだよな。……じゃあ足からやってやるか。とりあえずその足早くここに乗っけろ」
そう言って、千春の前に置いた椅子を指差す。
その椅子の上に足の先の方を置かせれば、足が真っ直ぐになって色々やりやすい。
「え、これに乗せるって?」
「いいから早く乗せろよ。それとももっと厳しくやるか?」
「分かったわよ、乗せればいいんでしょ、乗せれば」
若干ため息をつきながらぶっきらぼうに言う千春。
そのあまりの反省のしてなさに俺は再びブチギレた。
んで。
「あーだこーだ言ってないでさっさと置けって言ってんだよ!早くしろやこのアバズレ!」
「ヒィッ!ごめんなさいごめんなさい、今すぐ乗せるから……!」
ようやく俺のブチギレに怯えるようになってくれたようで。
顔を真っ青に染め上げ、その身体を震わせながら必死になって足を乗っける千春。
そして俺は。
右手を手刀にすると、怒りに任せて振り下ろす。
それはスネのところの上にクリーンヒットした。
スネのところはちょうど骨に勢いよく当たることになる。
当然、とんでもなく強い痛みに襲われるわけで。
「グガァァァ!」
千春はその場で痛みにのたうち回っていた。
ただし、あまり動きすぎると椅子から転げ落ちてしまうからそこまで動きは大きくないが。
「だからこの程度ですむなんて思っていないよな。お次はこっちだ」
今度は首の後ろに手刀を添える。
「ちとせ、それぞれ本人から聞き出しておこう。それで最後に言わせて終わりでいいんじゃないかな?」
「そうしよっか。じゃあ頑張って話させるね」
お互いに同意した上で方針変更。
とにかく話させることにした。
「千春、今の聞こえたな?話さなかったらここに容赦せずに手刀落とすからな?」
「は、はいぃぃぃ」
千春をついに脅していくのだった。
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