第8話 出産前の最終決戦 Side政信&ちとせ Part1
”それ”に最初に気づいたのは、視聴者の方だった。
修学旅行を2週間後に、中間考査を1週間とすこし後に控えた10月のある日曜日。
いつもどおり生配信を実施していた。
2人でいろんな質問に答えたり、ゲームしたり、ピアノ弾いたり。
そんななか、唐突に入ってきた質問に驚く。
「え〜、『恋する非リア充』さんからの質問です。『半年前にあった事件は全部でっち上げたもので、あのときの本当の被害者は逆だったって本当ですか?』……は?」
「なにそれ。誰が言ってたんだろう?……そう言えば、こないだママが」
「まさか、奴ら本当に行動に出たのか!?」
考えうる限り、それしか思い浮かばない。
慌ててスイッタ―を開き、とあるアカウントの画面に移動する。
実はアカウントを作成された段階で、アカウント名などはお義母さん経由で全て伝わっていたのだ。
そして、そのアカウントページを見て、予想が悪い方で当たってしまったことに気づいた。
投稿間隔は30〜60秒程度。
次々に投稿されていく、デマの数々。
次の瞬間、俺の取る行動は1つに決まった。
「ん?『追加の質問です。男の方は今も他の女と浮気しているとして、この写真が証拠写真だと一緒にあげられていたんですけど……』ちょっと確認してみますね」
「あれ、この写真の女って私じゃない?」
「だな。首から下は明らかにそうだ。……首から上はどう見ても合成だね。『どうして分かるんですか?』、そりゃここの肌の色明らかにおかしいだろ。首を境に色が違う。首から上のほうが白いってどういう人間だよ。しかも首の真ん中辺りに綺麗に境があるし」
どう見ても不自然な境目。
首の露出部のちょうど真ん中あたりで、綺麗に色が変わっている。
あんなくっきり変わることはないし、どう見ても合成である。
なんでこれで騙せると思ったのかは知らないが、こんなわかりやすい写真ではむしろ捏造ということが分かってしまうだろう。
案の定、チャット欄は大変盛り上がっており。
『ほんとだ、どっからどうみてもこれ合成じゃん』
『そもそもこの2人が浮気とかありえないでしょ』
『四六時中一緒にいるやつがどうやって浮気するんだよ(笑)』
そして大半の人が騙されてなかった。
しかし、問題はそれ以外である。
当然、俺たちのことをよく思わない人たちはコレを機に猛攻撃してくるだろう。
悪意があれば、コレに便乗して何されるかわからない。
「ってかこいつら止める気なさすぎでしょ。しかもこのアカウント、心当たりありまくりだし」
「そうなの?」
「これあれだよ、どこの誰とは言わないけど元カノだよ」
その爆弾発言に、一気に盛り上がるチャット欄と、魔王のような雰囲気を出すちとせ。
『これはきたぞ』
『マジか、あのクズっぷりがまた見れるのか?』
『うっわ、さすがにヤバすぎでしょ、こいつ』
視聴者は面白くなっているようだが、こっちの部屋は極寒ブリザードの真っ只中である。
「ねぇ、まーくん」
「過激発言じゃないならどうぞ」
「うちの元カレと姉は軽く一回タヒんだほうがいいよね?」
「おい待て、簡単に
「だって彼奴等しぶといから生き返るでしょ?だから一回くらい
「この世に蘇生魔法とか無いから!それさっきまでやってたゲームの世界な!…とにかく、お義母さんに協力を仰ぐから」
「はい、どうぞ」
そう言って差し出されたものに驚く俺。
「だからなんでちーのスマホなの?」
「まーくんのスマホ解除できないんだもん」
「しかも通話状態!まあいいや。…もしもし?」
ちとせの行動に驚きつつ、電話に出る。
もちろん、俺の声しか配信されないが。
『……もしもし?なんでちとせのスマホから政信くんが電話してきてるの?』
「すみません、緊急事態なもんですから」
『緊急事態、ね。……何があったの?』
「そっちにいる元カノと間男が行動に出ました」
『例のアレ使って?』
「ええ。絶賛投稿中ですよ。……とりあえず本人とっちめてやりたいんですが、諸々ありますんで――」
『いいわよ。こっちでやっとくわ。……あいつは主人にお願いするわね』
「ありがとうございます。わざわざすみません……」
『いいのよ。主人もすぐにとっちめられるように向こうに行ってるんだし。……配信頑張ってね〜』
で、その会話のうち、俺の言葉だけで充分に推測出来たのか。
『おいこれ、あの夏のアレみたいなことになるんじゃないか?』
『いや、もっと盛り上がるだろ、これ』
『生配信してくださいね〜』
流れるコメントに思わず苦笑してしまうのだった。
//////////////////////////////////////////////////////////////
配信内では、
政信→まー(くん)
ちとせ→ちー(ちゃん)
になっております。基本的に呼び捨てです。
(よく考えたら、この呼び方とある作品内で使われていた……)
//////////////////////////////////////////////////////////////
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます