第3話 ふたりっきりの放課後 その2

 

「ふ〜、いっぱい食べたねぇ」

「ほんとだな。全部食べきれたけど意外とお腹いっぱいだわ」


 結局二人で完食したはいいものの、二人揃って食べすぎになるという結末を迎えた。


「買い物どうする?どこ行く?」

「そうね、取り敢えずスーパーで良いんじゃない?」

「まあな、冷蔵庫の中身ほぼ無いし、特に野菜類と肉類がめちゃくちゃ少ないもんな」

「じゃあ帰り道のスーパーでいっか」

「そうだな。わざわざこっちで買っていくメリットがない」


 学校は稲毛海岸駅からそこそこの進学校だ。

 今日は夕飯を食べるので稲毛駅までバスに乗って千葉駅に出ていた。

 最悪、千葉駅の周りならとりあえずなんでも手に入るからきたはいいが、わざわざ重いものもって1時間弱も電車に乗る気にはなれない。

 

 さっさと行く場所を決めると、二人揃って席を立つ。

 幸いなことに、今日は駅ビル内で済ませていたために、エスカレーターでちょっと降りればそこはもう改札口だ。


 デカデカと『JR東日本 千葉駅中央改札』と書かれた看板とがお出迎え。

 その奥に並んだたくさんの列車案内から目的の路線を探し出す。


「えっと、総武快速線、成田線、総武本線、外房線、内房線、中央総武線、総武快速線?あれ、ない?」


 ちとせが自分が普段使う路線名すら忘れてるようなので教えてやる。


「右から4つ目。外房線でしょ」

「あ、ほんとだ、あった。えっと……、『18:34発当駅始発普通上総一ノ宮行き』でいいのかな?」

「いや、その5分後の快速上総一ノ宮行きのほうが早い。到着は5分以上早い」

「そうなんだ。使ったことあるの?」

「ああ。千葉に用事があったときには基本これを使うんだ。東京から使う時もあるけど、その時はグリーン車で帰ってきてる」

「ふーん。まあ、そこそこ編成も長いし今から並べば座れるよね?」

「確実にな。ここから45分くらいかかるけど」


 その返しにうぇーという顔を一瞬したものの、すぐに笑顔になって俺の手を取る。


「じゃあなおのこと早く並ばないと!ほら行こっ!」


 そして逆の方向へ走り出そうとするちとせを引き留める。


「そっちは総武本線と成田線しかないけど。外房線は5・6番線」

「えへっ、ごめんね」


 微妙にかわいいなと思ってしまいつつも、ちとせの後を追う。





 しばらくして。

 お客さんをそこそこ乗せた快速電車はいつもの車掌さんの放送が入る。


「ご乗車ありがとうございます。外房線、快速電車の上総一ノ宮行きです。途中本千葉、蘇我、鎌取、誉田、土気、大網、茂原、終点の上総一ノ宮に停車致します。電車は前から1号車、2号車の順で一番うしろが増4号車の15両編成です。途中11号車と増1号車の間は連結部のため通り抜けが出来ませんのでご注意ください。主な停車駅の到着時刻をご案内致します。蘇我、18時45分。誉田、18時55分。大網、19時05分。茂原、19時15分。終点上総一ノ宮は19時23分、午後7時23分の到着です。お手洗いは前より1号車、中程11号車と後ろより増1号車にございます。グリーン車のお手洗いは4号車と5号車の間にございます。電車はお手洗いを含めまして全車両禁煙です。おタバコはご遠慮ください。この列車のグリーン車は4号車と5号車です。ご利用の際は乗車券の他にグリーン券が必要となります。なお、車内でお買い求めいただきますと、駅での発売額よりも高くなりますので予めご了承ください。次は、本千葉に停車致します」


 それを聞いたちとせがこちらに話しかけてくる。


「結構時間がかかるんだね」

「そうなんだよな。だから気をつけないとスーパーで買物ができなくなっちゃうんだ」

「そっか。これに乗れてよかったね」

「ほんとだな」


 お客さんが多いので、話を控えることにする。

 カタンカタンという心地いい音に、俺はいつの間にか眠りの世界へと連れ込まれていった……



//////////////////////////////////////////////////


 政信が眠ったということは、ちとせちゃんにとってはチャンスですね!

 何が起こるんだろうか……?

 ちなみに、外房線の放送は数年前に乗ったときに聞いたやつを思い出して書いたので、ちょっと違うかもです。


/////////////////////////////////////////////////

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る