第33話 ちとせの復讐 その1

 政信が千春とやり取りをしている頃。

 ちとせは邦彦と対峙していた。


 ただし、その空気は政信たちとは全然違った。

 ちとせの放つその殺気たるや、政信ですらまだ出していないほどのレベル。

 それどころか、普段の優しさを全く感じさせず、もはや冷酷な殺人鬼を想像させるレベル。


 そんなちとせに対峙する邦彦は、先程からろくに口を開けない状況が続いていた。

 当然、何を聞いても全く返事が帰ってこない。

 それはちとせをさらに怒らせていっていた。

 ちょうどイライラしやすい時期と重なっていたせいもあり、いつもよりも堪忍袋の緒が切れやすい状態。

 そんな状態で、自身の感情を逆なでするような行為。

 そばに政信がいれば別だが。


 もし政信がいるならそもそもそこまで頭にくることは起こりづらい。

 なぜなら彼女の頭の中の半分以上が”政信”という成分で占められており、いくら他人がギャーギャー喚こうとなにしようと、それがちとせの頭の中にはっきりと届くことはないのである。


 だから前回までは”本当の”ブチギレまではいかなかったというのにも関わらず、それをどうやら自分に都合のいいように解釈したらしい邦彦達は。

 と考えたのだった。

 それが招いたのは、ちとせをブチギレさせるに相応しいレベルの煽りである。

 それに耐えるということをちとせがするはずもなく。


 なんの前触れもなく、邦彦の腹に拳をめり込ませた。

 下から入れるように拳で突き上げ、そのまま上に向かって拳でふっ飛ばす。


 吹奏楽部やらダンス部やらに所属していることもあってか、その細い腕に込められた腕力は相当なものがあり。


 邦彦はあっけなくふっ飛ばされた。


 そして。

 ちとせはツカツカと歩み寄ると。


「邦彦、あんたがしてくれやがったことも、言ってくれやがったことも一字一句すべて覚えてるからな。それで私の前にいまさらノコノコとやってきて、やることは私を煽るだけ?さっきからなんなの、あんた。ぶっ殺されたいわけ?」


 凄まじく低い声で威圧するように話す。


 命の危機をその本能で感じとったのかは知らないが、ものすごく怯えた表情でコクコク頷く邦彦。


 それを一瞥したちとせは、言い放った。


「あんた、今からいくつか質問するから。もしちゃんと答えなかったら、それは死を意味するからね」





 邦彦に対する、死刑宣告を。





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 明日で1月も終わりなため、当初の予定では明日で一旦毎日投稿は止める予定でしたが、非常にきりが悪いため、この戦いが一通り終わるまでは毎日投稿を続けます。

 なお、この先約1週間に渡って多忙な日が続くため、更新できない日ができる可能性もありますが、予めご了承ください。


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