第32話 最終戦 その16 (千春v.s.政信編完結)

 またも出てきた陰謀論。

 一体全体どこまで人に罪を押し付ければ気が済むのか、俺には全くもって理解不能。

 というか、そもそも千春の考えを理解しようという時点で無理な相談ではあるのだが。


「じゃあそのお前の部屋にあること自体が陰謀だとして。一体どういうことだ?」

「誰かが私を嵌めようとしてやったのよ!」

「心当たりは?」

「邦彦とお父さんとお母さんに決まってるでしょ!」

「どうしてそう言い切れるんだ?」

「だって、私が悪者になれば邦彦は攻められないで済むし、お父さんやお母さんも私と縁を切る口実になるでしょ?」


 千春の口から次々に飛び出てくる妄言。

 そしてそれは同時に義両親に対する侮辱でもあった。

 邦彦に関して言えば何を言おうとどうぞご自由にという感じなのだが、義両親に関してはそうは問屋が卸さない。


「つまりお前は、自分の親と邦彦によって無実の罪を着せられたと、そう言いたいんだな?」

「そうよ」

「そうか。ただし、捨てたことはそこまで重い罪じゃないということも、書いたことが何より重い罪だということをわかっていてのセリフだな?」

「は?」

「何を言ってるんだ、証拠を本当に捨てたのだとしたら、ある意味わざわざ捨てないでおいてくれたというのはありがたいことこの上ないからな。そもそもこれを書いた人間とその内容を特定するために探していたわけだし」


 ガタガタ震える千春を尻目に、問題のノートの中身を見ていく。

 浮気云々のところは再度じっくり話すつもりだし、他のところを攻めていく。


「まずこれ書いたのはおまえで間違いないな?あきらかに筆跡がおまえのものだ」

「そうよ。それを書いたのは私」

「ふーん。で、俺が同級生たちを殴ったりしていて、彼女にはセクハラとDVをしているってのはどういうことだ?」

「だってまさにそのとおりのことをしてるじゃな い」

「ほう。残念ながら俺は同級生や先輩後輩に対して怒鳴ったことはあっても手を上げたことは一度もない。それから、セクハラやらDVをしたこともない。強いて言うならちとせに結構本気で怒られたくらいだ」

「そんなはずは……!」

「だいたいどうやって知るんだ、こんな情報?」

「はい?」

「だっておかしいだろ。仮に俺が本当にやっていたとして、この学校の生徒じゃないのにどうやって情報を得るの?まさか勝手に入り込んでいたわけ?だったら不法侵入だぞ?もし防犯カメラの映像を見たって言うなら、どうやって見たのか教えてほしいがね」

「それは……その……」

「で、本当のところはどうなんだ?」

「全部あなた達を陥れるためにでっち上げた嘘です。ごめんなさい」

「いまさら謝ったところで許す気は一切ないからな。……ったく、最初からそう話せっつーの」


 無事、千春がでっち上げたことが証言された。

 あとは邦彦からも聞き出した上で、最後の浮気云々の話をするだけである。


 ようやく、終わりが見え始めていた。

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