第25話 復讐という名の地獄落とし 後編 その5

「あんたの子なんか産みたくもないわよ!」


 千春のその叫び声を皮切りに、千春と邦彦の喧嘩が始まった。


「俺もお前と一緒になんか居たくないし、何よりお前との子供なんかいらんわ!」

「じゃあどうしろっていうのよ」

「堕ろせばいいだけの話だろうが」

「……そうね。あんたの言うとおりとか癪だけど、それがいいわね」


 こいつらまとめてぶっ殺してやろうか。

 そう思ったのはちとせも例外ではないようで。


「……政信、私も動き足りないけどどうする?」

「俺が動いていいか?」

「いいよ。その変わり、お腹だけは注意してね」


 ちとせのお墨付きならいくら暴れようと文句は言われない。


「千春。邦彦。まずは一旦座れ。話はそれからだ」

「なんなんだよ、政信。俺達に関係ないだ――」

「早く座れと言っているのが聞こえへんのかこのクズが」


 次の瞬間全員がピキリと固まり、千春たちはすぐに座った。


「まず千春。その子はどうするつもりだ?まさかとは思うが殺すつもりか?」

「殺したくはないよ。でもそうするしか無いじゃない!」

「産まれさえすればこっちで育ててやることも可能ではないが。というかそもそもお前たちが育てられるとは思ってないがな」

「その通りだよ、政信くん。子供はある程度までうちと千春達の間を行き来させようと思っている」

「その上で聞くが、お前たちは一体どうするつもりだ?復縁を迫るとか言ったらぶっ殺すがな」


 その途端にギクリと固まる千春と邦彦。

 その様子に怒りは爆発へ向け一直線である。


「お前たちはどこまでも馬鹿なのか?」

「あんたたちのほうが馬鹿だったはずでしょ!」

「実力を隠してきてただけだ。そもそもの問題として高校生で浮気相手と子供こさえたお前らとなんで復縁しなくちゃならない?デメリットしか無いんだが?」

「もうしないし、この子を堕ろしたっていいから」

「ああ、俺もコイツとは二度と会わないから。それでいいか、政信?」


 二人のゴミ発言に声が思わず低くなる。


「……てめぇら」

「え?許してくれるの?また一緒にいられる?」

「その腐った根性から叩き直してやろうかこのクソゴミどもがぁぁ!」


 イライラが抑えきれなくなり暴発する。


「だいたいさっきから黙って聞いてりゃ何だお前たちのその態度は。さっきからずっと言っとるやろが。二度とお前たちとは会いたくないって。そういう人の話も聞かず、あまつさえ子供を殺す?冗談じゃない。なんでそんなやつと付き合わなあかんのさ。こっちから願い下げだわ!」

「お姉ちゃん、邦彦。もう二度と私達の前に姿を表さないで。ぶっ殺したくなる」


 俺の猛攻撃とちとせの冷徹な言葉の棘にあえなく撃沈する二人。

 しかし戦いならまだ終わっていない。

 今度はスイッターの件についても話さなくちゃならないのだ。

 というかコレが本題だが。


「それからもう一つ。スイッターの話といえば分かるな、お前ら」

「何言ってるの、政信?あたしは何も間違ったことはしてないわよ」


 こいつ、まだ言い逃れするつもりか。

 そういうつもりならこっちも手加減なしだ。

 二度と日の目を見ることがなくなるようにしてやろうか。


「証拠がないとでも思ったのか、このアバズレ」


 スラッと俺の口から飛び出た暴言に、一気に部屋の空気が冷え込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る