第18話 見せつけの偽デート 4-4

 さて、話し合いの末俺達がやってきたのは園内の一角にあるモスバーガーである。

 わざわざ山梨まで来ておきながらなぜモスなのか。


 富士急ハイランドオリジナルメニューが存在するからである。

 その名も「フジヤマバーガー」。

 普通のバーガーもあるのだが、こちらのほうがボリュームたっぷりで美味しい。

 ちなみに「高飛車バーガー」もあり、ちとせと半分ずつ食べてシェアすることにした。

 間接キス?そんなもの知らん。

 美味しく食べられるならそれでいい。

 そんなごときでなぜ騒ぎ立てるのかよく分からない。

 とはいえど、富士山ふじやまを見ながらフジヤマバーガーを食べるというなかなかシュールな光景が広がるのである。

 思わず笑ってしまいそうなフレーズである。


「随分寒いダジャレじゃない」

「別にいいだろ、思いついたんだから」

「まあ、そういうところがギャップがあって良いんだけど」

「はい?ギャップ?いつもこんな感じだと思うんだが」

「まさかの自覚なし?普段は結構しっかり者なのに」


 そんな事言われたっていつもどおりなのに変わりはない。

 そもそもたいして仲良くないクラスメイトたちと話すのにダジャレを入れるような行為は馬鹿でしかない。

 なんのためにそんな事しなきゃいけないのか分からない。


「そういうこと?なら私相手なら良いんだ」

「そりゃ千春と違って通じるからな」


 元カノ千春は全然冗談が通じないわ話が噛み合わないわ、もう嫌になるくらいだった。

 やはり付き合う相手が話のレベルが低くて合わないとか苦痛である。

 そもそもあいつにとっては単なるATMでしか無いようだが。


 


 さて、そうこう話しつつもあっさりと食べ終え。


「あと4時間位だな。帰りの列車に間に合わなくなる」

「そのくらいしかいられないの?」

「ああ。帰りは若干遠回りになるけど、特急富士回遊と特急わかしおを乗り継ぐから、確実に座れる」


 帰りは特急富士回遊号新宿行きと、東京駅始発の特急わかしお号安房鴨川行き(ただし乗車する車両は上総一ノ宮止まり)の席をすでに予約済み。

 いくら羽目を外しても良いようにと、事前に二人分の特急券とポイントを交換しておいたのだ。

 しょっちゅうJRを使っているためか、ポイント残高がとてつもなく多く(そのくせ特急券を普通に買うから減らずに貯まり続けるのだが)、往復で特急を使ってもまだ5桁余る。

 さらにモバイルSuicaで乗るからこの往復だけでもたくさん貯まるのだ。


 結果、これ幸いとやれアッチだコッチだとアトラクションを羽目を外して楽しみまくり。

 特急列車内で二人揃って夢の世界を旅行した。




 そして時間は過ぎ去って21:00、無事に上総一ノ宮駅まで帰ってきた俺達は、ゆっくりと家を目指していた。


「特急乗って良かったね、危うく降りられないところだった」

「ああ。上総一ノ宮止まりの車両にして正解だな」


 二人して疲れていたためか、わかしお号が始発の東京駅を発車する頃には眠りについており、上総一ノ宮駅に到着し車掌さんに「終点ですよ〜」と起こされたのだ。

 もしも前寄りの車両に乗っていたなら最後、終点の安房鴨川まで連れて行かれた上に帰る電車が無いという自体に陥っていただろう。

 そもそも後ろからあんなに怨嗟の視線×2を受けながら寝れる時点でどうかしてる。


「しっかし、やっぱりあいつらいたな」

「そうね。あんなに露骨に視線を浴びせられたら誰でも気づくもん」

「そうだな、ともかくこれであいつらを別れさせるための作戦は実行できたな」

「うん、あとは明日フルボッコにして終わりだね。どうせスイッターで生配信でしょ?」


 当たり前である。

 復讐の原則は目には目を、歯には歯をだ。

 これは大昔の「ハンムラビ法典」に書かれているくらいだから、絶対守るべきだろう。

 これに則れば、スイッターで仕掛けてきた奴にはスイッターで成敗すべきだ。

 こうすれば全世界に奴の所業が知れ渡るし。


「ふふ、政信らしい考えだね。じゃあまた明日」

「ああ、また明日。頑張ろうな」

「うん、絶対にクソ姉潰そうね!」


 なぜそんなにテンション高いんだ、とはあえて突っ込まずに別れた。



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 お待たせしました!

 いよいよ復讐第2弾に入りますが、その前に今回の偽デート編の千春サイドと邦彦サイドを1話ずつ公開します。

 復讐をお待ちの方はあともう少しで始まりますのでお待ち下さい。


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