第32話 もう一つのバカップル その2

 なんとも言えない複雑な表情を見せた理由。

 それはずばり、その画面の中で行われているコトだった。


 やっと結ばれたという祝福したい思いと、いきなりそんなに盛り上がる?という困惑と。

 それらがごちゃまぜになった武弥は、なんとも言えない複雑な表情しか出せなかったのだ。


「先生に相談しにいってよかった〜」

「だな。俺たちがいてもアレみたいな状況になりそうだったんだろ?」


 そう言いながら武弥は画面を指差す。

 とてもじゃないが直視したくないそれに、武弥は思わずカメラをオフにした。

 友人カップルのアレはさすがに見たくない。

 何より、こうやってカメラの電源を遠隔で落としたことで、明日返してもらうときに疑われなくて住む。


 だって電源が入ってないんだから、盗撮してたなんてバレないのだ。

 バレなきゃ犯罪じゃないというのは聞いたことあるだろう。

 今まさに武弥たちがやっていることがそれである。


「しかしまあほんとによくこうなったなというかなんというか」

「ほんと、ちとせちゃんの嫉妬心てものすごいよね〜」

「仕方ないよ、あの事があったんだし」

「……確かにそういえばそうかもしれないけれど、でもさすがにやりすぎな気がするような……」

「……」


 二人揃って押し黙る。


 武弥は、ある意味ちとせの愛の重さは政信にあってると思っていた。

 例の1件で、政信の心に傷がついたのは事実だし、そのせいで女性恐怖症になりかけたのもまた事実。


 どこの馬の骨とも分からない女が政信に話しかけた場合、彼の心はまた傷つくだろう。

 それを、ちとせの独占欲の強さでもって寄せ付けないということにより回避しているのであった。

 それに、ふたりとも独占欲が強く、ず〜っとべったりくっついているのが普通と言ってる人たちである。

 むしろこのままゴールインしていただきたいくらいである。







 無言時間がつづく武弥たちの部屋。

 しばらく経って。


 ふっと空気が緩み。

 ふたりそろって顔を見合わせると。


「あはははっ!」

「ふはははっ!」


 二人揃って吹き出した。

 もうどうでも良くなったのである。

 政信たちがなにをしようと、その中が悪くならない限りは平気だということに気づいたのだった。






 その後のホテルには。





「もっと……、もっとぉ……」




 何かをねだる寝言(?、客観的判断による)が偶に聞こえる部屋と。




「ふふふっ!」

「はははっ!」




 たまに笑い声の聞こえる部屋があったとかなかったとか。



<修学旅行1日目 終了>






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 次回は1日目のルートまとめと軽いトークです。


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