第15話 お寺と琵琶湖疏水 その2
大きなお堂の前で、全員が集まるのを待つ。
「三井寺での行程です。まず、必ず見ておきたい箇所を集団で見学します。その後、各班ごとでの見学を開始します。集合時間と場所は解散時に指示します。では出発します」
イントネーションこそ関西弁だが、言葉は標準語なガイドさんの説明を受けながら、進んでいく。
「これが弁慶が引きずったっていう鐘か……」
「確かにこの傷見たら信じちゃうね……」
俺とちとせがつぶやきながら見つめたのは、弁慶が引きずったとされる鐘。
確かに、明らかに擦れたのであろう傷や、削れた模様がある。
最初にこの話を聞いたときは、そんなバカなと思ったものだが、いざ本物を見てみると信じてしまいそうになる。
こんなときこそ、国民的猫型ロボットが使ってるあのタイムマ――。
「タイムマシンがあったらホントかどうかわかるのにな〜」
全く同じことを隣で言うちとせ。
俺が思っていたことと全く同じことを言うので、思わずじっと見つめてしまう。
「? ……政信、私の顔になにかついてる?」
「いや。ただ、俺が思ったことと全く同じことを言うもんだから、まさか心の中見られたかと思ってな」
「ふふっ、私達って似た者同士なんだね。おんなじこと思うなんて」
「だからここまで相性抜群なんじゃないか?」
「そうだね〜」
そんな会話を繰り広げていると、後ろから。
「お〜い、所構わずイチャつくのいい加減やめてくんないかな?あと、ここ寺だから。禁欲のところだから。そんな堂々とイチャコラしていいところじゃないから」
「ほんと、微笑ましいけど見せつけないでね?流石に甘すぎるよ、ちとせちゃん」
武弥と彩希さんにからかわれる。
だが、俺は冷静に反論した。
「イチャコラしすぎってのは置いといて、イチャつくなってのは特大ブーメランじゃないか。武弥だってさっきから彩希さんといちゃついてんの分かってるんだからな?」
「そうだよ。彩希ちゃんだって武弥くんの手離さないし、ず〜っとくっついてるじゃん!あと若干顔が蕩けてるよ?」
「うそ!私の顔蕩けてる?」
「うん。いつもに比べると引き締まってないよ。デレってなってる」
「そんな……。バレないように気をつけていたのに」
そんな言い争いをしていると、後ろから委員長が。
「あんたたち全員イチャコラしすぎなのよ。もっと自重しなさい」
呆れた様子で叱られた。
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