第20話 政信の目覚めと説教と… その2
医師が看護婦に指示を出して持ってこさせたのはとある写真だった。
「
「まあ待ちなさい。まず君が搬送されたときの容態は、救急車の段階で心拍数低下、ICUに搬入された段階で心肺停止状態になっていたんだ」
「はあ」
「その上で撮られたのがこの写真だ」
そう言って見せられたのは、おそらく内蔵の中だと思われる写真。
ただ、その大半は白くなっており、なにかおかしいことが容易に想像できる。
「この写真は君の搬送時の胃の中の様子だ。君がおそらく過労だろうということはそこのお嬢さんたちから救急隊員を経由して伝えられていてね。すぐさまチェックしたらこれだよ。この写真から何が言えるか分かるかい?」
「あまり分かりませんが、何かしらの異常が起こってるとだけは分かります」
「そうか。実はこの白い部分はね、すべて胃潰瘍だよ」
「はい?胃潰瘍?」
「そう、胃潰瘍。普通この半分の大きさの時点で動くどころか寝てても辛いほどの激痛に襲われるはずなんだが、何故か君は気づかなかったようだ。おそらくストレスと過労が一気にきたせいで痛覚がマヒしていたんだろう。今はもう全て治っているけどね。ただ、君はなかなか目を覚ます兆候がなかったんだ。過労で一度倒れると、生還率はどうしても低くなる。正直言って確率は五分五分だったよ。とにかくまずはゆっくり休むといい。いろいろそこの子たちも工夫しているみたいだしな」
「なんで知ってるんですか?」
「お嬢さん、君たち声が大きいんだよ。ナースステーションまで丸聞こえだったようでね。そこから私に情報が入ってきてたんだよ」
その言葉に何も返せないちとせ。
一方の俺はあまり自分の状態がよくわからなかった。
当たり前だ、自分の胃の中の大半が胃潰瘍だったなんてそう簡単に信じられる話じゃない。
すると彩希さんがおもむろに口を開く。
「千春の件とか、いろいろあったのは知ってる。政信くんが女性不信になってるのも分かってる。でもちとせちゃんのことは信じられるんでしょ?ならもっと早く相談してあげて。もっと周りを頼って。ちとせちゃん、政信くんが倒れてから一度もこの病院の外に出てないの。ずっと政信のそばにいたんだよ。私達だってすっごく心配したの」
「そうだよ、政信。俺も彩希もすっごく心配したんだ。お前がいないとぽっかり穴が空いた感じで寂しいんだよ。部活もみんな覇気がない。なんだかんだ言っても政信の存在に助けられてたんだよ」
すると、それまで涙ぐみつつ抱きついたままだったちとせが、上目遣いでこちらを見つめる。
そして。
「政信、私のこと、嫌い?」
唐突にわけのわからんことを言い出した。
///////////////////////////////////////////////////
ここまで来ればあともう一押しかな……?
///////////////////////////////////////////////////
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます