第44話 恥ずかしい証言
先に口を開いたのは邦彦だった。
「こいつらが浮気とか普通にありえねぇよ。知ってるか、こいつらのあだ名塾年夫婦とか砂糖無限製造機とか糖尿病罹患者製造機とかそんなだぞ」
「それがどうしてんだよ?」
「なに、なんでそう言われてるか想像できないのか、お前?」
「別にそのくらいそれなりに仲良ければ言われるだろ」
「いんや。だって想像してみ?朝学校来るときはずっと一緒、教室はいるときも一緒、授業は必ずどちらかが教科書を忘れて机をくっつけてシェア。休み時間のたびに頭の天辺からつま先までぴっとりとくっつき、トイレに行くタイミングも一緒。お昼は机くっつけておんなじ中身のお弁当広げてあ〜んしあって、授業のペアワークはいっつもこの二人で組む。放課後になれば2人で部活へ行き、帰りも一緒。そして何より基本ずっと手をつないでいて、話すのはトイレのときと食事の時くらい。授業中もよく見ると机の下で手を繋いでいる。そんな状態が毎日だぞ?どこで浮気するっていうんだ?」
「トイレ行くときがあるんだろ、ならそのときに――」
「一応言っておくが、トイレに行くときはいっつも5分以内で戻ってくるぞ?」
「は?」
「マジの話だ。なんでそんなに早いのか、って聞いたことあるけど、『イチャイチャする時間を減らしたくないから』だと。そんなやつがどうやったら浮気すんだよ。天地がひっくり返ってもありえないわ」
「んな」
「それだけじゃないわよ。私、ちとせちゃんとクラスずっと一緒だから知ってるけど、クラス別々だったときから休み時間のたびに政信くんのクラス行ってたし、今じゃくっついていないときはないんじゃないかなってくらいくっついてるよ。なにせこの間の調理実習のときなんか、完全に二人の世界作り上げていたし」
「あのときはあの二人だけで1班扱いされてたしな」
補足すると。
この間の調理実習のとき、俺たちのことをよく知っている担当の先生が俺たち二人で1班となることを許してくれたのだ。
調理器具が違うだけで、いつもの家と同じ感じで作っていたら超褒められたのだ。
「あのときは先生も私達も完全に驚いたもんね」
「な。完全に息ぴったりの夫婦だったもんな。そうだ邦彦、証拠欲しいだろうからくれてやるよ、今の話が真実だっていう証拠をな」
そう言って取り出したそこそこの枚数の写真。
その全てに俺たちの恥ずかしいレベルのイチャイチャが写っており。
俺とちとせは、あまりの恥ずかしさで顔を赤く染めてしまうのだった。
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