第24話 あきちゃん V.S. ちとせ 1回戦

 ちとせは怒り心頭だった。

 いくら冗談で言ったのだとしても、「あきちゃん」と政信に言われたこの娘の反応は、到底許せないものだった。

 政信に他の女の影がある事自体嫌だが、それに気づいてあえて嫉妬心を煽るやつはもっと嫌いである。

 まさに今の「あきちゃん」が当てはまっていた。

 さっき政信に泣きそうな演技をしたあと、ちとせの方を見てニヤっとしたのである。

 おまえの気持ちには気づいてるぞ、とその顔には書いてあった。

 その上で真っ向から勝負をふっかけてきたのだ、負けるわけには行かなかった。


 こうしてちとせと明希は今、激突する。




「明希さん、あなた何様のつもりなの?」

「そちらこそ何です?私のまーくんに何してくれてるんですか?」

「へぇ……、私の婚約者に手を出そうなんていい度胸じゃないの……、この泥棒猫が」

「泥棒猫はそちらでしょう?……ちとせさん」

「な!なぜ私の名前を!?」

「そりゃ今さっきまでそこの売店で名前呼び合ってましたし」

「そ、そう……。ってそんなのはどうでもいいのよ。あなた私の政信とどういう関係なの?」

「昔小学校が一緒だったんですよ。相思相愛でしたけど。……そういうちとせさんは?」

「私は政信の婚約者よ。とっても仲がいいって言われてるわ」

「そうですか……、あなたもそういうお人でしたか」

「そうよ、あなたと違って政信とお付き合いしてるの」

「……私から先に奪ったくせに」

「なにか言ったかしら、泥棒猫?」

「何も言ってませんよ、メスブタさん?」

「「はあ?」」


 俺を挟んでにらみ合う二人。

 もういい加減胃の痛みが限界なので、この場を諌めることにする。


「ちとせ、明希、聞いて」

「何、政信?」

「手短にね、まーくん?」

「まず明希」

「何かな?」

「俺のことが好きなのかもしれないというのはわかった。けれど、今俺には好きな人がいる。今俺の隣で婚約者として一緒にいてくれているちとせだ。だから、明希の想いには答えられない。再開してすぐだけど、ごめんな」

「……そう、だよね。……いいよ、まーくん。今は諦めてあげる。けど……」

「けど?」

「少しでも隙を見せたら私のものにしちゃうから。覚悟しててね、まーくん」

「お、おう。……ちとせ」

「何?」

「今明希にも言ったけど、俺が一番好きなのはちとせだ。それだけは、忘れないでくれ」

「……今回はそういうことにしておいてあげる。でも……」

「でも?」

「次こういうことがあったら許さないからね、政信?」

「ひゃい!」

「ならよろしい」


 ちとせに鋭い眼光を向けられ、思わず声が上ずってしまう俺であった。



<あきちゃん V.S. ちとせ 1回戦 勝者:高山ちとせ>



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 次回から夕食です!

 拗ねたちとせちゃんがあんなことやこんなことをしちゃうかも……?


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