第13話 山下り

 あれから1時間ほどが経過し、バスへと戻っていた。

 俺たちがバスに乗ったときに、すでに何名か乗っていたが。

 俺たちが戻ってきて程なくすると、ぞくぞくと集まってきた。


 全員が乗り込んで、人数のチェックが終わり、バスは出発する。


 行きに来た道をひたすら降りていくだけのため、だんだんと眠気が襲ってくる。


 最初の方こそ大変良い眺めの景色が広がるが、ある程度まで降りると今度は木々が密集してとてもではないが景色は見えない。


 朝はいつもより早起きし、新幹線、さらにバス、そして延暦寺ではかなり山歩きに近く、結構坂や階段を上り下りしていたこともあってか、多くのクラスメイトが寝ていた。

 ちとせも例外ではなく、バスが動き出してすぐくらいにうつらうつらしはじめ。


「……むにゅう……まさのぶ〜……そこは……だめだってばぁ……」

「…………」


 いったいちとせは夢の中で俺に何をされているのか。

 そうこうしているうちに、窓にもたれかかっていたその頭が、俺の肩にこてん、ともたれかかる。

 そういうのを見ているうちに、俺もだんだんとこくこくし始め。


 睡魔に負け、意識を手放すのであった。





「……きて……起きて……政信くんもちとせちゃんも起きろー!」

「……ん〜?」

「……ママぁ……まさのぶとの……じゃましないでぇ……」

「ふたりとも早く起きて!もう着いたよ!」

「……着いた?」

「そうだよ!今修学旅行中でしょ!」

「……はっ!」


 慌てて飛び起きると、目の前に呆れた表情の彩希さんがいて驚く。

 うっかり寝てしまっていたようで、気づけばバスは目的地に到着していた。


「ちとせちゃんも!もう着いたよ!」

「ふにゅぅ〜……、おはよ、政信」

「おはよ。気づいたら着いてたな」

「もう着いたの?」

「みたいだね」


 俺たちが次に訪れた場所。

 それは、弁慶が引きずったとされる鐘があることで有名な、三井寺である。


 そこまで移動時間は長くないが、気づけば寝てしまっていたようだ。


「で、なんで彩希ちゃんはそんな呆れた表情してるの?」

「だって、ちとせちゃんと政信くんって寝てるときもべったべたにくっついてるんだもん」

「ほぇ?」

「起きてるときも肩から下はくっついてたけどさ、寝てるときに至っては頭もくっつけてんだもん」

「嘘!?」

「ほんとたよ。……ほら」


 彩希さんが見せてきたスマホ画面には。


 お互いに頭を相手の方に傾け、頭同士がくっついて人の字のようになっている俺たちが写っていた。

 しかも、肩から下はピッタリとくっついていて、その手は俺の右手とちとせの左手が恋人繋ぎして二人の太ももの間に置かれているという状態。


「……すっげぇはずかしいんだけど」

「でも、その写真欲しい……」

「言われなくても送ってあるよ。タケくんにも送って、政信くんに送ってもらってる」


 スマホを確認すると。


「確かに武弥から送られてきてる。……お願いだから消しといてよ?」

「え〜、ど〜しよっかな〜?」

「彩希ちゃん?そういうこと言うならもうテスト勉強なしでいいね?」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!すぐに消しますから!」

「じゃあ今すぐ消して」

「はい」




 思わぬところで恥ずかしい目に遭う俺たちであった。




―・―・―・―・―・―・―・―・―・―


 うちのところは男子校ですが、軒並みこの移動では寝ておりました。

 私も政信のような感じで寝てしまいました。

 ただし、隣にもたれかかるということはありませんでした。



 行程の〇〇寺は、三井寺でした。

 結構有名らしいです(私は聞いたことがありませんでしたが)。

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