第26話 リハビリ中のイチャイチャ禁止なんて法律はない その4
おやつを一緒に食べると決まるなり、ちとせは小ぶりなバスケットを取り出す。
それを覆う布が取られ、俺、武弥、彩希さんの3人は驚きのあまり声を上げる。
中から出てきたのはクッキー、パウンドケーキ、カップケーキ、そしてマフィン。
どれもこれも手作りなのは間違いない。
だが、その見た目は高級スイーツ店で売っていてもおかしくないほど美味しそうな見た目。
すでにほのかに香るお菓子たちの甘い香りもとても良く、味もほぼ確実に保証されている。
「ちとせってこういうのも作れんの?」
「そうだよ。あまり最近作ってなかったんだけど、今日は久しぶりに作ってみたの」
「そうか、じゃあこれから頂くわ」
そう言って取ったのはパウンドケーキ。
まず一口かじってみると、たちまち口の中にオレンジの爽やかな香りと味が広がる。
そこそこ甘いものの、甘さ控えめなのかケーキの割には甘すぎず、甘い物が苦手な俺には最高にあっているスイーツである。
「これめっちゃうまい。甘さが控えめになっているとか、マジですごすぎる」
「そんな褒められると嬉しいんだけどちょっと恥ずかしいけど、政信の口にあってよかったよ」
「なんで甘さ控え目にしたんだ?」
「政信は甘いものは苦手だったでしょ?だからそれでも美味しく食べられるようにって」
「俺のためにそこまでしてくれたのか。ありがとうな、ちとせ。俺は今すごい幸せだよ」
「ほんと!?」
「ああ。だってこんなにも想ってくれてる人がいて、幸せじゃないわけがない」
そのままちとせの腰に手を回して抱き寄せ、耳元で言う。
「ありがとう、ちとせ」
ちとせの顔はたちまち赤く、そして惚けていき。
そのまま2人共に抱き合いくっついていく。
「あー、政信、お願いだからそういうことは2人きりのときにやってくれないかな?他人の前で砂糖ばらまかないでくれ」
「ちとせちゃん、幸せなのは分かるけど、もう少し自重して?」
たかが感謝の気持ちを伝えただけで何が悪い。
「感謝の気持ちを伝えてただけだけど?」
「だったらなんでそのままハグしてんの?しかも思い切り2人の世界に入って周囲に砂糖ばらまいてたよな!?」
「それは無いと思うぞ。よっぽどお前たちのほうがイチャイチャしてるだろ。入院患者の前だろうと公衆の目のまえだろうと関係ないもんな?」
「……彩希、これひょっとしてだけど事前に学校で言っとかないと悲惨な状況が生まれるやつかな?たぶんそうだよね?」
「絶対そうだよ、タケくん。どっからどう見ても学校に来始めたら教室が地獄になるやつだよ。まあ今は別のクラスだからそこまでだとは思うけど。……ってそこ!人が目をそらした隙になにいちゃついてんの?もう、そっちがそうするならこっちもそうするから!もうこれ以上我慢するのは無理!いいよね、タケくん?」
彩希さんの言ってることはちょっとよくわからない。
別にずっとハグしっぱなしってだけなのになんで責められなきゃいけないんだろうか?
「もうこれ以上は俺も無理だしな。いいぞ」
その返事をもらうなり手を恋人繋ぎして足先から頭の天辺までピトリと横並びながらもくっつく武弥達。
それを見たちとせが耳元に口を寄せ。
「政信、あのくらいイチャイチャしたいね?」
「ならこのくらいか?」
そう返事して抱きしめる力をすこし強める。
こうして、病院の中庭で私服の高校生カップルと、入院患者とその見舞いに来た彼女の2組のカップルがいちゃつくというなんともよくわからない空間が生み出された。
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おやつ食べ始めたと想ったらいちゃつく2人。
確かにこんなカップルが教室にいたら大変なことになりそうですなぁ。
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