第14話 出産前の最終決戦 Before-2

 母たち2人が腕によりをかけてつくったと豪語していただけあって、食卓に出された数々の料理に箸が止まらなかった。

 そして今、俺たちが何をしているのかというと。


「はい地獄ー!これで何回目、陽香はるか?」

「もうこれで3回目よ!……前はあんなに勝ってたのにぃ!」

「陽香、間違ってもリモコン投げるなよ?」

「投げないわよ!……くっそぉ、誰か巻き添えにしたい……」


 親4人のW○i P○rtyを見せられていた。


「政信のお母さん、地獄に落ち過ぎじゃない?」

「ていうか大騒ぎしすぎだろ。子どもたちに呆れられるってどんなだよ」


 俺達は超大盛りあがりの親たちに呆れ、早々にコーヒーを入れてのんびりしていた。

 何が楽しくて親がイチャイチャしながらゲームをしているところを見なければならないのだろうか。

 そんなことするくらいならのんびりしている方が100倍はマシである。


……。


「ていうか!なんでうちの親はのんきに遊んでいるのかな?今日ってすっごい重要な話する日でしよ?」

「それはそこでゲームしている4人組に向かって言ってくれ。俺に言われたところでなんの返事もできん」


 何度も言うようだが、今日この場に集まったのは、土曜に控えた"アレ"の話をするためであって、断じてこんなふうに楽しむためではない。


 と、集まっていの1番に確認したのにもかかわらず、現状はこれである。

 俺たち2人を散々からかったあと、そのままゲームを始める母2人と、それに乗っかる父2人。

 いっそのことゲーム機の電源引っこ抜いてやろうかと思った矢先、一瞬早くブチギレたちとせがお義母さんのもとへ行き。


「ママ!今日集まったのは遊ぶためじゃないでしょ!この間までは私達よりも危機感を持っていたのにどういうこと?」

「わかってるわよ。これ終わったら始めるつもりよ」

「まだ半分にしか到達していないよねぇ?あと15分で終わらなかったら問答無用でコンセント引っこ抜くからね!」


 ……ちとせ、将来子供が言うこと聞かずにゲームしてたら容赦なくやりそうだ。

 と思ったが、口に出すと厄介なことになるのは容易に想像できたので、必死にこらえる。


 それから13分後。

 結局うちの父さんの圧勝に終わり、大人しくテーブルにつく4人。


「さて、打ち合わせを始めようか。……その前に政信くん、またしてもうちの千春がやらかして、本当に申し訳ない」


 開口一番、頭を下げるお義父さん。


「いえいえ、予想はできていたことですから大丈夫ですよ。それより、今回はどんな感じなんですか?」

「こんかいはちょっと厄介だな。千春は今回、間違いなく小林くんと手を組んでいるね」

「やはりですか。……千春単体にしては随分賢いな、と思ったんですよね」

「予想通りということか。当日も2人がかりで攻め込んでくると思われるから、前回みたいにすんなりとはいかなそうだぞ」

「偽弁護士とか連れてこなけりゃ大丈夫ですよ。それに、俺たちがずっと一緒にいたっていう証拠はたっぷりありますからね」

「そうか。……だが、千春は浮気の証拠を手に入れたとか言って大喜びしていたが?」

「……マジすか」

「ああ。かなり大喜びしていたからな。……本当にしているのか?」

「まさか。……真実はちゃんとお見せしますよ、世界中にね」


 そう言い放つ政信がまとうとてつもなく恐ろしい気配に、あのちとせですら怯えてしまうのだった。





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 陽香は、政信のお母さんの名前です。


 明日、年末記念(20万PV突破記念も兼ねます)のSSを投稿します。

 テーマは大掃除です。


 また、1月2日は年始のためお休みします。

 本編の次回の投稿は1月5日です。


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