3章 修学旅行で何も起こらないなんて誰が決めた?

〇〇が黙っているわけがない

第1話 修学旅行事前準備-1 その1

 学校に再び登校を開始したのは結局9月の下旬。

 そして初日の6限はLHRだった。

 先生は入るとすぐに黒板に『修学旅行 班決め』と大書き。

 そしてチャイムの鳴動と同時に。


「井野が復帰したことだし、今日は修学旅行の班決めをする。皆知ってるとは思うが、今回は5日間のうち2日目の大津〜神戸、3日目の神戸〜広島が自主研修となる。各自3〜4名の班を作ること。なおこの班はそのまま部屋割りにもするから。質問は?……ないなら始めて。自主研修は各自で行くところも決めた上で行程表を作成すること。来週のこの時間までに完成させて。来週の6限の最後に回収するから」


 さて、修学旅行の班決めが始まったわけだが。

 ちとせと彩希さんは他のクラスなため、普通に考えて組むことは出来ない。

 だが、今朝登校して以来抱えていた疑問点は、そこに関係していた。


「彩希ちゃん、政信と武弥くんと4人でいいよね?」

「もちろん。いつもの4人でいいと思うよ?」

「俺も賛成。彩希と一緒にいられるなら大丈夫」


「……なんでちとせと彩希さんがうちのクラスにいて、おまけに席順が変わって俺の隣がちとせ、俺の前が武弥でその隣が彩希さんなの?何があった?」


 お察しの通り、なぜか他クラスだったはずのちとせと彩希さんがうちのクラスの生徒になってるし、おまけに俺の前が武弥なのは変わらないものの、俺の隣がちとせ、武弥の隣が彩希さんという席順になっていたのだ。

 普通学年の最中でクラス替えとかは聞いたことがないのだが。


「んー、このクラス2人抜けたでしょ?で政信くんが結構色々あったでしょ?だからちとせちゃんはこっちのクラスにいたほうがいいんじゃないかってなったみたいだよ?」

「じゃあなんで彩希さんがついてきてるの?」

「たまたまその話全部聞こえちゃってね。それでちとせちゃんが彼氏のいるクラスに変わるなら私もそっち行きたいって言ったらあっさり変われたんだよね」


 まさかとは思うが、ひょっとしたら先生方はかの噂を知っているからコレをいい機会に一緒にさせたのではないだろうか、という疑惑が頭を持ち上げたが、頑張って抑え込む。


「じゃあ修学旅行はこの4人で決定で。……で、どこ行く?俺としては聖地巡礼もしたいんだけどな」

「私も政信と同じ。せっかく向こうに行けるんだし、どうせなら行きたい」

「じゃあ行くとして、何の作品にするんだ?」

「一応『五等分の花嫁』と、『響け!ユーフォニアム』くらいかな?あとは艦これとか?」

「そうした場合の候補地は?」

「清水寺、伏見稲荷大社、東映太秦映画村、京都駅、宇治市色々、呉市色々くらい」

「あと神戸の北野異人館街行きたいな。特にスタバは絶対におさえておきたいよね?」

「それってひょっとしてあのやつ?」

「そう、あのやつ」


「何の話かよくわからんが、少なくともそんなにあったら回りきれなそうっていうのは分かったよ」

「タケ君、私達このまま何も言わなくてもいいの?」


 オタクトークに花を咲かせる政信たちと。

 とにかく黙るしかない2人だった。

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