第22話 復讐という名の地獄落とし 後編 その2

 政信が女性恐怖症になってる可能性があるとは思っていたが、まさかあんなにあるとは思わなかった。


「ちとせ、もう気づいてるわよね」

「気づいてるよ、ママ。政信は多分重度の女性恐怖症でしょ?」

「うーん、あってるけどちょっと違うわね。あれは重度の女性不信よ」


 嘘でしょ?

 女性不信ってことは、じゃあ私のこの想いは一切信じられないってこと?

 バカ姉千春のせいで私は政信に信じてもらえないってこと?

 言われてみれば昨日もそうだった。

 さりげなくアピールしてたのにも関わらず、全然気づく素振りがなかった。


「アピールって何したのよ?」

「抱きつくときに胸当ててみたり、しれっと間接キスしたり、ずっとくっついて歩いたり」

「あとは?」

「そのくらいだよ?」

「もっと大胆にいったら?さらりと『そういうところが好きなの』とか言っちゃえばいいのよ。しれっと顔赤くしながら『やっぱ今のなし』って言えばどんな男でも落ちるわよ」


 よし、次の機会に実践しようっと。

 と、ママは少し深刻な顔をして続ける。


「ただ、今はあまりやらないほうがいいと思うわ。女性不信の人にそんな事やったら逆に嫌われちゃう。今は他の男には冷たく、政信くんにだけ普通に接しなさい。健気にアピールすれば周りも応援してくれるから」


 健気にアピール、か。

 でもそれしか無いし、女性不信が払拭されるまで頑張るか。


「さて、戻りましょ。最後の打ち合わせは念入りに、ね」


 そうだった。

 まずは原因のクソ姉千春を潰さなくちゃ。

 政信をこんなにした責任は重いんだもの、ね。




 あれから数分後。

 ちとせとおばさんが戻ってきたところで話し合いを再開する。


「まず確認だが、今回は千春を徹底的に追い込むのが目的だ。でなければ罪の重さを理解しないだろう。父親としては微妙なところだが、そもそもこれは私の育て方のミスだ。尻拭いは自分でやる」

「いえ、おじさん達は悪くないですよ。むしろ平気でいられる千春達がおかしいんですから」

「そうか。そう言ってもらえて嬉しいが、だが決戦の時はもう近い。とにかくまずは証拠を確認しよう」

「まずは俺とちとせが撮った写真たちですね」

「ああ。それから、私達で調べた結果をまとめたレポートだ。金の収支、ホテルに行った回数などだ。少し目を通して欲しい」


 レポートによると、2日おきに彼らはどうもホテルに行っていたようだ。

 さらにほぼ毎日のように最低1回はやっていたもよう。

 それから捏造した俺の浮気の証拠もたくさん出てきた。

 どう見ても顔の部分を俺とちとせに差し替えているだけだ。

 なにせ首の色が途中で変わってるのだから。


「これを出してきて、先に浮気したのはそっちだ、とか言われてもあっさり反論できますね。それについ最近まで部活もありましたし」

「ならば安心だな。我々はあまり口を出さないつもりだ。もし暴走したらそのときは抑えてやろう」

「ありがとうございます。じゃあ頑張りましょうか」


 そしてスマホの画面を操作し配信を始める。


「今回は顔だしません。浮気したやつだけ顔が出るかもしれませんが。さて、皆さんおまたせしました。あと数分程度で始まりますのでそれまで待機していてくださいね。この生配信は後で編集して配信しますのでご心配なく。ピアノは明日辺りに配信します」


 とそこで。

 ピンポン。

 インターホンが鳴り、千春が来たことを知らせた。

 いよいよ復讐の時が来た。

 今度こそは二度と日の目を見ることがなくなるまで潰してやる。

 待ってろよ、千春。

 地獄の底に突き落としてくれるわ。




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 さて、いよいよ次回からは口論大会(もとい罵声大会?)です。

 今度こそ全力で潰しにいきます。


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