第130話魔王イオマ
「お姉さまぁ、やぁぁあああっとぉ来てくれましたねぇぇえええぇぇっ!?」
謁見の間の一番奥、本来なら玉座があるはずのそこには女王様スタイルでマントを羽織り鞭を舐めているイオマがいた。
そしてその横にはうにょうにょとうごめく触手に絡まったベーダが張り付いている。
「イオマっ! なんてことをしているのですの!!!? これではモザイク総動員しなければですわっ!!」
ここで慌てて視界に映っていたいたベーダにモザイクがかかる。
あ、顔だけはちゃんとそのままだわね。
「うふふふふふっ、お姉さまがなかなか来ないからベーダで遊んじゃいましたぁ~。ああ、まだ乙女ですよ? でももう少し遅かったらこの鞭で女にしてあげていたのにぃ~あはははははははははっ!」
何がうれしいのかイオマは高笑いする。
確かにデルザの言う通りイオマがおかしい。
「イオマ様、もうおやめください! 今までの行動は主様の為では無かったのですか!?」
「デルザぁ~、生意気ですね? 私に口答えするのですかぁ~? 全てはお姉さまの為ですよ? お姉さまを私のモノにする為の!」
そう言って足元にいくつもの魔法陣を発生させる。
そしてそこからアークデーモンたちが這い出て来た。
「うふふふふっ、私はお姉さまにだけ用があるのです。他のみんなはこいつらと遊んでいてください。さあ、お姉さま、私のモノになって下さい!!」
イオマがそう言うと同時にアークデーモンたちが一斉に襲ってきた。
「ちっ! 黒龍様御下がり下さい! デルザも引くでいやがります!!」
「ドラゴンクロー!」
「主よっ!」
「またアークデーモン? ってこいつらっ!?」
クロエさんやクロさん、ショーゴさんにセキが迫りくるアークデーモンに攻撃をかけた時だった。
「エルハイミ、あのうにょうにょしたのがまわり中に来てるよっ!!」
セキの足に絡み付く触手、そしてマリアの警告の通りいつの間にか壁や天井、そして床から無数の触手が生えていた。
「イオマっ! このっ!」
シェルは光の精霊魔法でイオマを攻撃する。
直撃すれば精神ダメージが強くて大概の人は失神するだろう。
しかしイオマはそれも触手で防いでしまった。
「シェルさぁ~ん、邪魔しちゃ嫌ですよ? あんまり邪魔するとこの子たちでシェルさんを女にしちゃいますよぉ~」
そう言ってイオマは真横に生えて来た触手を握り撫でまわす!
アウトぉーっ!
モザイク動員よっ!!
あたしは思わず叫びそうになってしまった。
しかしイオマはそれでもまだまだ触手を生やしその上に立ち上がる。
「さあ、お姉さま! 魔界の触手をたっぷりと味わってくださぁいぃぃぃっ!!」
途端にあたしにも触手が一斉に伸びてくる!
「冗談ではありませんわっ! こんなものを味わうつもりはありませんわっ!!」
あたしはそう言って襲い来る触手を周りの空間事一気に分解する。
それはたとえ異界の物でもマナを魔力、そして魔素にまで分解するので抗う事も出来ず溶けるかのように消えていく。
「うふふふふっ、異界の触手も通用しませんかぁ? 流石です、お姉さまっ!」
「イオマ、いい加減になさいですわ!」
そう言ってあたしが空間移転してイオマの前に飛び出した瞬間だった。
目の前のイオマが消えた!?
そしてあたしの後ろから声がする。
「やっぱりお姉さまは優しい、本気で来ませんね? でもそれじゃあぁ駄目です。私は本気。だからイオマの意思が抗っても『魔王イオマ』としてお姉さまをあたしのモノにします!!」
そう言って背中にあの鞭を打ちつける。
ビシッ!
「つぅっ!?」
なんとイオマは躊躇なくあたしの背中にあの鞭を打ちつける。
服が裂けあたしの背中に真っ赤な一筋の跡が残る。
「エルハイミっ!」
「お母様っ!?」
アークデーモンや触手に阻まれシェルやコクたちはこちらにまでは来れない。
しかしイオマったら本気であたしに鞭を入れて来た!?
あたしは振り返りながら次に襲ってくる鞭を空間事ずらす。
きんっ!
ぼとっ!
空間事ずらされた鞭はその場で切り落とされる。
そしてあたしは自分の傷を治す。
「イオマ、よくもやりましたわね!? もう怒りましたわよっ!」
「ああぁ、そう、それですよお姉さまは何時も強く気高くそして美しい。良いです、お姉さまがあたしだけを見ている。ふふふふっ! 良いですよぉ、来てくださいぃぃぃぃっ!」
あたしはイオマに飛び込みながら目の前で二人に分かれる。
そして左右からイオマを拘束する為に光のロープを投げつける。
「甘いです! 鞭が一本とは限らないんですよぉぉっ!」
言いながらイオマは両手に新しい鞭を持ち光のロープを打ち落とす。
そしてその鞭をそのままあたしに打ち込んでくる。
「そんなモノでですわっ!」
あたしはまたまた空間をずらしその鞭を断ち切るがそのわずかな瞬間に一人のあたしが触手に足を取られてしまった。
だがもう一人のあたしはまだ動ける!
そのままイオマを捕らえようとしたその時だった。
イオマのマントから赤い髪の毛が見えた。
そのほんの一瞬にあたしは動きが刹那止まりその間に触手に腕を取られてしまった。
「しまったですわっ!」
「くっ! 気持ち悪いのが絡み付いてきますわっ!」
一瞬に動きを止めたあたしたちに触手が絡み付く。
だけど今はそれよりあの赤い髪の毛が気になる。
「うふふふふっ、やっと捕まえたぁ~。駄目ですよお姉さま、逃げ出したらこの子がどうなるか分からないですよぉ~」
そう言ってマントの影から三歳くらいの一人の女の子を引っ張り出す。
それは間違いなく赤毛の女の子。
顔立ちはティアナのそれとは違っているけど凄い可愛らしい女の子。
あたしは彼女を見た瞬間魂が揺れた。
ああ、間違いない。
あれはティアナだ。
あたしが恋焦がれ求め続けたティアナの転生者だ!!
「ティアナぁっ!!」
あたしの魂の叫びがこだまするのだった。
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