第6話整理整頓
パパンはこめかみを押さえながら先ずはあたしとシェルについて聞いて来た。
「エルハイミ、お前がティアナ殿下に嫁いだのは分かる。理解もしていたつもりだ。だからティアナ殿下の転生について世界中を探し回ると言うのも了承したつもりだ。しかし、いきなりエルフのお嬢さんをお前が娶ると言うのはどう言う事だ? お父さんはもう何が何だか分からなくなってきたよ」
本気で悩んでいる様だ。
「あらあらあら~、今度はシェルちゃんがエルハイミのお嫁さん? じゃあきっと美しい孫が生まれるわねぇ~」
「お義母様、お任せ下さい! 必ずかわいい子供を授かってみます!」
おいこらシェル!
そうじゃ無いでしょ、そうじゃっ!!
シェルの言葉にパパンは更に深いため息を吐く。
あたしはとにかく本音を話す。
「シェルは便宜上私の妻としてティアナのいない間に宣言しないといけない事情があるのですわ!! かくかくしかじかで、これから向かうエルフの村で問題になるのでそう言う事になるのですわ!」
「‥‥‥事情は理解できたが、私にはどうもそうとは見えないのだが」
パパンはなおもあたしを見てそう言う。
まだ分からないのか‥‥‥
「って、シェルぅっ!! 人が真面目な話しているのに何やっているのですわ!?」
シェルは真面目に話しているあたしにべっとりとくっつき頬をすりすりとしている。
「え?お義父様が公認してくれたんじゃないの?」
「今までの話の何処をどう取ったらそうなるのですの!?」
「あらあらあら~、三人目の孫も間近ねぇ~」
パパンの大きなため息が聞こえた。
* * *
「それで、バティックにカルロスよ、本気で冒険者になるつもりか?」
「勿論です、父様!」
「ぼ、僕だって!」
「カルロス様ぁ~~~~っ!」
パパンの質問に即答するバティックとカルロス。
そして泣きそうなユミナちゃん。
うーん、こっちの問題の方が大事な気がするのだけど。
「カルロスは条件としてユミナを説得できなければ認めん。バティックはエルハイミが認めなければだめだ。その条件であれば二年間に限って冒険者をする事を許す。その後はバティックは私の後を継いでもらう。カルロスはユミナを娶る事を許すしやりたい事があれば相談に乗る」
パパンは一気にそこまで言うとお茶を飲み干した。
「だ、旦那様、本当に私なんかで良いんですか?」
思わず真先にユミナちゃんが発言した。
「私は自分の子供たちの婚姻に関しては当人たちの意思を尊重するつもりだよ。ましてやカルロスはハミルトン家の男としてユミナに約束をしたのだ。ちゃんと責任を取らせないとね」
「せ、責任って、まさかですわ!?」
あたしは思わずカルロスを見る。
この子は姉のおっぱい触りまくるところもある。
子供のじゃれ事と今までは思っていたけどまさかユミナちゃんに!?
そんなあたしをカルロスはジト目で見て話し始める。
「姉さま、僕には姉さまがとんでもないこと妄想しているの分かるけどちゃんとわきまえてるよ。ユミナとは手を握っただけ。少し前に東屋でユミナから告白されてユミナだったら良いよって答えたんだ。まさかそこに母様がいたとはつゆ知らず」
あっちゃーぁっ!
ママンがそんな現場にいたら屋敷中にすぐに知れ渡るわ。
だからパパンも冷静だったんだ。
ただ、ちょっと見直したのは子供の意思は尊重するって話。
ハミルトン家に取り入りたい人たちは結構いる。
事実あたしの誕生日だって色んな人が寄って来ていたし、ティアナとの事がある前もいろいろと話は来ていたそうだ。
でも使用人の娘との仲を認めるとは、パパンも太っ腹ね?
「さて、それでカルロスはどうユミナを説得する?」
にやにやしながらパパンはカルロスを見る。
あ~、この状況楽しんでる。
このオヤジはぁ~。
しかしカルロスはユミナちゃんに向かって歩き出す。
そしてユミナちゃんの手を取って真剣なまなざしで見つめ合う。
「あっ、カ、カルロス様‥‥‥」
「ユミナ、待っていて欲しい、きっと僕は帰ってくるから。だから僕を信じて待っていてくれないか、ユミナ‥‥‥ (じぃ~)」
ユミナちゃんはうっとりとした表情でカルロスを見ている。
そしてそんなユミナちゃんの手を更に強く握るカルロス!
おいこら、お前いつの間にそんなスケコマシになったぁっ!!
あたしが唖然としているとクロエさんがポツリと。
「流石姉弟でいやがりますね、あれはもう落ちたでいやがります」
「クロエさん!!」
あたしの抗議にクロエさんはあれを見ろと言わんばかりに視線でカルロスの方を見るように言う。
「はい、カルロス様、ユミナはずっとお待ちしております(ぽっ)」
ああっ~!!
完全に恋する乙女になっちゃってる!?
こうなったらもう何も見えない、聞こえない。
見えるのはカルロスだけ、聞こえるのはカルロスの甘い声だけ!!
「ふむ、見事だカルロス! 流石我が息子!!」
「お父様!!」
何に感嘆しているのよパパン!!
まさかパパンも若い時には‥‥‥
「あらあらあら~、若い時のお父様そっくりねぇ~、でも私はそれでは落ちなかったのだけどねぇ~、そう言えば他の女性にもあんなこと言っていましたわね~ ‥‥‥思い出してきたら何故でしょう、ちょっとイライラしてきましたわねぇ~? あなた、後でちょっとお話がありますわ~(おこマーク)」
うわっ!
ママンが今までに見た事無いような笑顔を!?
「くっ! なんてプレッシャーですか!?」
「このザラっとした感覚‥‥‥ 不快だわ!」
コクとセキもママンのプレッシャーに押されている!?
きゅぴーん!
パパンの額に一瞬きらめく光!
「ユリシア、シェルちゃんとエルハイミの子供の名前を考えてくれないかぁ?」
「あらあらあら~、三人目の孫ねぇ~? そうねぇ~」
パパンはあれやこれや考え始めるママンに見えないように額の汗をぬぐう。
「ふ、私にプレッシャーを与えるとは、流石だユリシア!」
おいこら、オヤジ。
何かくれてこそこそ言っているのよ!!
あたしはそんな様子を見て呆れていると今まで静かにその様子を見ていたバティックがあたしに聞いてくる。
「それで姉さま、何をすれば認めてくれますか?」
静かにそれでいて絶対に今度こそはその意思を曲げないとでも言いそうな表情だった。
「バティック、分かっていますの? 冒険者になると言う事は全て自分でしなければならないのですわよ?」
「勿論分かってます、それでどうすれな認めてもらえるんですか?」
バティックはずいっと一歩踏み出しあたしに聞く。
うーん、いくら強くなったとはいえ弟の身を案じない姉はいない。
万が一が有ったら取り返しがつかなくなる。
しかしこのままでは‥‥‥
そこでふとあたしにひらめきが訪れる。
「バティック、カルロス。わかりましたわ。ではあなたたちがやっていけるかどうか今度のエルフの村まで行くのに私についてきなさいですわ!」
「なにっ? エルハイミ?」
驚くパパン。
バティックもカルロスもあと少しで成人する。
確かに世界を見たり自分で全てやる苦労は将来この子たちの為に役には立つだろう。
そして心配ならあたしの目の届くところに置けばいい。
「今回のエルフの村に行く用事にあなたたちを同伴させて冒険者に成れるかどうか試しますわ。その間にダメなら実家に帰る。大丈夫であれば冒険者ギルドに登録して冒険者を二年間するっていうのでどうですわ?」
あたしはパパンを見る。
パパンはしばらく無言でいたけどあたしの顔を見て頷く。
「わかった、エルハイミに預けよう。多少強くなって天狗になっている。しっかり鍛えてやってくれ」
あたしはパパンのその言葉を受けにっこりとほほ笑む。
「バティック、カルロス容赦しませんから覚悟しなさいですわ!」
こうしてエルフの村まで二人は同行してくる事となったのだった。
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