第74話悪魔召喚の魔術師
あたしたちは町の港とは反対側になると言う岩山を目指していた。
結局あの後大騒ぎは続きあたしが女神と言う事にされてしまった。
そして元凶の根絶をすると言う事になりこうしてそこへ向かっているわけだが‥‥‥
「なんで時たま悪魔が出てくるのよ!?」
シェルはそう言いながら精神体にも効果のある精神の精霊をぶつける。
途端に半透明の悪魔はもがきながら逃げようとするけどこいつらを放っておくことは出来ないので最後はあたしがさっくりと始末しておく。
「こんなに頻繁に悪魔たちが出ていたのによく聖騎士団の連中は平気でしたね? お姉さま」
「ああ、あの鎧には魔法が効かないのと同時に精神攻撃とか出来無いから悪魔たちも手が出せなかったのよね」
イオマが不思議がっているとライム様は面白くなさそうにそう言う。
すると対魔処理された物って魔法だけでなく精神魔法全般にも強いのかな?
「もっとも憑依を防止するくらいしか効果ないから実際には魔力付加の武器が役立ったんでしょうね」
確かに聖騎士団の連中は後援の魔術師たちもいたからそうなのかもしれない。
「見えてきましたね、お母様。どうやらあそこの様です」
コクがそう言い町で聞いたその岩山と言う所へ着いた。
特に何の変哲もない岩山のように見える。
「さてと、それじゃあエルハイミよく見ててね。空間を把握できると言う事はこう言う事も出来るのよ」
そう言ってライム様はその岩山に手をかざす。
それは流石としか言い様の無いものだった。
もともとライム様は空間の把握や置き換え等が上手く、今のあたしには空間の認識方法がライム様のそれを見る事によりとても勉強になる。
構成するマナを確認して地下空間やその入り口などを探り当てるというモノだ。
【感知魔法】とはあくまで魔力などを基準に感知するのでここまで精度の高い事は出来ない。
さながらスリーディースキャンのようだ。
「っと、間違いないわね。そこの岩の後ろが入り口ね? うーん、一応ガーゴイルみたいのがいるようだけど」
言われたその岩の後ろを覗き込むとぽっかりと開いた穴があった。
そしてそこからただよくこの気配は‥‥‥
「なんか嫌な雰囲気ね‥‥‥」
「なんと言うか、こう大地の底から漂ってくるような嫌な感じですね、お姉さま‥‥‥」
「とは言えここには間違いないでしょう。おや? あれは門番でしょうか?」
何かを感じ取ったシェルやイオマは嫌そうな顔をしている。
見ればライム様が言ったように穴に入って少しの所に石像が並んでいる。
多分コクの言う通りあれが門番となるガーゴイルのゴーレムだろう。
「んじゃ、あたしが片付ける~」
「セキは後にしやがれです。たまには私にやらせろです」
暇なんだろうなぁ。
肉弾戦を得意とするセキとクロエさんが指をぽきぽき鳴らしながら前に出る。
そしてあたしたちはその穴に入って行くのだった。
* * *
「話にならないでいやがります」
「うーん、逆にストレス溜まる~」
まあ分かってはいたけどクロエさんやセキが相手じゃミスリルゴーレムでも力不足だから出て来るガーディアンはどんどんと片付けられて行く。
そしてほどなく大きな扉に着く。
「この奥に研究施設があるのですわね?」
「まあそうだけど、さっきも見せた通りここって何階かの階層になってるわ。力を感じるのはやっぱり一番下ね」
ライム様に言われあたしたちは扉を開こうとして魔法で封じられている事に気付く。
でもあたしがさっと手を振ればその効力も無くなって簡単に開けた。
「便利なのは分かっているけど、もうエルハイミとライムがいればあたしたち何もしなくても良いんじゃない?」
シェルはそう言いながら光の精霊を呼び出す。
そして薄暗いその広間には魔法陣が一つ。
「主よ!」
「ちっ! 黒龍様お下がりを!」
「面倒な」
「うわっぁ~」
ショーゴさんやクロエさん、クロさんが真っ先に前に出る。
そしてみんなの気持ちをセキが代弁するかのように言う。
「エルハイミ~あれってみんな悪魔?」
マリアはあたしの肩にとまり髪の毛の陰に隠れながら聞いてくる。
結論から言うと下級各魔がわんさかといる。
しかも面倒な事にみんな精神体の状態。
肉弾戦を得意とするショーゴさんやクロエさん、クロさんにセキにはとても不利な相手だ。
「はぁ、やっぱりこうだったか。召喚魔法の魔法陣動いたままよ」
ライム様は分かっていたようだけどわざとらしくかぶりを振る。
そしてあたしを見る。
「はぁ~、分かりましたわ。私が片付けますわ」
「あらぁ、ありがとうエルハイミ♪」
わざとだ。
絶対わざとだ!!
にこにこするライム様を見ながらあたしは内心文句を言うけど既に目の前まで下級悪魔たちが迫っている。
あたしはこいつらをさっさと消滅させると何事も無かったように魔法陣にまで歩み寄る。
そして驚いたのがこの召喚魔法の魔法陣‥‥‥
「魔力はあちらの世界からね。全く、これだから研究に没頭した人間は」
ライム様の言う通りとんでもない術式だった。
何がとんでもないって召喚と同時にその魔力源が悪魔たちのいる世界からの供給と言う事になっている。
通常はこちらが贄となる魔力を提供してそれに応える形で下級悪魔たちはやって来る。
そしてあわよくば術者の肉体や魂を奪おうとする。
「この術式、なんてすごいんです!」
イオマはそれを見て驚いている。
まあ、契約の文章に「自前でこっち来い。そうしたらこちらの世界の魂を食わせてやる」なんて書いてある。
だから何も考えていない下級各魔たちは自前の魔力を使ってでも自力で呼ばれそしてこちらで術者がいないのに自由に暴れまわっていたわけだ。
「全く、確かにこれでは先にこれらの研究を片付けなければですわ」
あたしはそう言いその魔法陣を塵へと化す。
二度と発動しない様に。
「さて、それじゃどんどん行きましょ」
ウインク一つライム様はあたしにお気軽に言ってくる。
絶対この後も全部あたしにさせるつもりだ。
あたしはため息一つこの厄介な研究施設をシェルの言う通り異空間に埋めてしまいたくなるのだった。
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