第101話やる気のエルハイミ
「転移地点が分かったとはいえ、私も参加しなければとはですわ」
「そう言わずにやりましょうですわ」
「今回は国ごと教育のやり直しですもの、手数は必要ですわ」
ミハイン王国の首都ベイベイの高級宿にあたしたちエルハイミ三人はそろった。
うーん、根源は同じあたしなのだけど最近少しずつ各あたし毎に思った事を口にするとわずかながらに差異が生じて来た。
これって分身が作れる兆候なのかな?
それはさておきあたしたちは役割を話し始める。
「シェルと一緒の私はオークションに行きましょうですわ。ショーゴさんもついて来てくださいですわ」
「ではイオマと一緒の私は拠点である屋敷を見繕って購入しましょうですわ」
「するとコクと一緒の私は裏方で動いていいのですわね?」
あたしたちは顔を見合わせ頷く。
「あー、エルハイミ。何をどうするつもりか自分たちだけでなくあたしたちにも教えてよ」
シェルがあたしたちに向かってそう言う。
「「「ええ、分かりましたわ。みんなにも説明しますわ」」」
あたしたちは声をそろえてそう言う。
「まず、シェルと一緒の私は予定通りオークションに行きますわ。そして問題となる奴隷たちを片っ端から買いあさりますわ! 在庫がなくなるまでまず買い付けるのですわ」
「そしてイオマと一緒の私はここベイベイの街での拠点となる屋敷を購入して買い付けた奴隷たちをそこで保護しますわ。その後このベイベイで商売を始めますわよ!」
「その間にコクと一緒の私がまずは経済を混乱させますわ。さらに裏社会を牛耳るのですわ!」
あたしたちは予定を話す。
それを聞いたみんなは首をかしげる。
「ずいぶんと回りくどい事をするのですね、お姉さま?」
「お母様ですから何かお考えが有るのでしょうが、どのように?」
「だいぶ目立つんじゃないの? それにそれだけの奴隷を買いあさるなんて、お金あるの?」
イオマがそう感じるのは仕方ない。
しかし今回は時間をかけなければならない。
そしてコクが言うようにこの国の経済を混乱させる。
勿論シェルの言うように資金についても今回は禁じ手を使う。
「今回はミハイン王国に痛い目を見てもらいますわ。奴隷制度を否定はしませんがそれは公の下、法の定めるモノであればとやかく言うつもりはありませんわ。ですけど非合法で特に女性をないがしろにするような輩には痛い目にあっていただきますわ!」
「その通りですわ。変態たちにはきついお仕置きをですわ!」
「ついでにこの国の経済自体の構成も変えてやりますわ!!」
あたしたちは口々にそう言う。
少女や女性たちを玩具にするとか同じ女性として許せない。
「五歳くらいの女の子まで毒牙にかけるとか、そんな輩はいっその事切ってやりましょうかしらですわ」
「ええ、ティアナがいるジュリ教の教会は徹底的につぶしてあげましょうですわ」
「そして二度と元に戻らない様に裏社会は私たちが牛耳っておきましょうですわ!」
何時になくやる気満々のあたしたち。
その気迫に押されたのかシェルたちは唾を飲んでそれ以上何も言わなくなった。
「「「さあ、始めますわよ!!」」」
あたしはそう言って指を立てて行動開始を宣言するのだった。
* * * * *
翌日イオマと一緒のあたしはベイベイの街の西側にある海辺の屋敷を購入した。
実家のハミルトン家ほど大きくは無いもののそこそこの大きさは有る。
そしてあたしとイオマはここで生活できる必需品を買いそろえたりポーチから引っ張り出したりしておく。
更に護衛のゴーレムとか作り出し、いろいろと動けるようにゲートとかも作っておく。
コクと動き出したあたしは最初にこのベイベイでの流通物資を調べる。
表面上は海産物の流通が一番多い様だ。
なのでその辺の漁師と片っ端から契約して海産物の購入を仕切る。
多分これだけでいろいろと動きが出るだろう。
そしてベルトバッツさんが調べた奴隷商の場所とジュリ教の孤児院、関わり合いのありそうな所をピックアップしておく。
細かい事はベルトバッツさんに更に詳しく調べてもらう。
そして明日の夕方シェルを引き連れてオークションに行くあたしは適当な小石を金貨に錬成して異空間に貯蓄し始める。
「エルハイミ、そのお金って偽物なの?」
「一応成分上は本物の金貨ですわ。もっとも、私がその気になればまた元の小石に戻せますわ」
あたしがそう言うとシェルは嫌そうな顔をする。
「主よ、そんな事をしたらこの国の経済が大打撃だぞ?」
ショーゴさんが覗き込みながらそう言う。
しかしそれがあたしの狙いだ。
「それで良いのですわ。まずは表も裏も経済を大混乱にしてやるのですわ!」
「エルハイミ、経済って美味しいの?」
あたしがショーゴさんに指を立てながらそう言うとマリアがあたしの方まで飛んできてそう聞く。
「私たちにとっては美味しい話になりますわ」
「うわぁぁぃぃいいっ! じゃぁあたしもそれ食べる!」
喜ぶマリアにあたしはガルザイルのプチドーナッツを引っ張り出して渡す。
マリアはそれをおいしそうに食べて喜ぶ。
あたしはそんなマリアを見ながらどんどんと金貨を作成するのであった。
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