第102話大騒ぎ


 「そ、それでは次の商品ですが二百から始めたいと思います‥‥‥」


 「それ千ですわ!」



 ざわざわっ!



 既に商品は最後の一人。

 今日だけで七人の子供が売買された。


 「せ、千。ほ、他にはいらっしゃいませんか?」



 がやがや‥‥‥



 この非合法のオークション会場でざわめきが起こる。


 全く、この変態どもめ。


 会場はそれほど大きくはないがみんな目元だけを隠す仮面をしている。

 勿論あたしもしているけど知っている人が見ればすぐばれる。


 そして七人すべてを買いあさったあたしは当然の如く注目の的になる。



 「い、いないようですので千で決まりです!」



 かんかん。



 決定のハンマーが打ち鳴らされ本日のオークションはこれにて終了。

 舌打ちやあたしを敵視する視線を残しほとんどの客は退席していった。


 あたしたちは支払いと商品の奴隷の引き取りにここの主催者に元へ行く。



 「お客様、本日は沢山のお買い上げありがとうございました。しかし一度にこれだけお買いになるとは。差し支えなければ理由を聞かせていただけませんか?」


 オーナーらしき黒メガネの四十代くらいの太った男がそう言ってあたしに近づいて来た。


 あたしはシェルとショーゴさんに言って支払いの手続きをさせる。

 シェルは大量の金貨の入った袋を腰のポーチから引っ張り出し置く。



 「ふむ、お客様はエルフの奴隷までお持ちか。これは大変珍しい。そして魔法の袋を奴隷に預けるとは」


 「この子は私にすべてを捧げてますわ。私の言う事は絶対ですわ」



 あたしがそう言うとこのオーナーはニヤリと笑う。


 「失礼いたしました。お嬢様はかなりのお方ですね。さて、それでいきなり本日の商品全部とは?」


 「ええ、私この度この街に引っ越してきましたの。それでいろいろと楽しめる使用人が必要なのですわ。いろいろとですわ」


 そう微笑みながらあ言うとそのオーナーは「なるほど」とだけ言ってあたしに頭を下げる。


 「申しおくれました、私ドレイド=ルブドと申します。このオークションの支配人をさせていただいております」


 「あら、ご親切にどうも」


 「して、お嬢様はこう言った奴隷はもっとご所望でしょうか?」



 かかって来た。

 予想通りあたしを大顧客としてあたしの欲しい奴隷たちを斡旋するつもりだ。



 「そうですわね、私は女の子が好きですの。特に小さな子は最初から仕込みたいのですわ、私好みに」


 あたしがそう言うとドレイクは更に嬉しそうにして頭を深々と下げる。


 「でしたら私共めをお使いいただければご要望の品をお持ち致しますぞ」


 「わかりましたわ。では今後も良いお付き合いをさせていただきますわ」


 あたしはそう言って買った商品共々この場を後にするのだった。



 * * * * *



 あたしは教会の屋根の上でコクとセキ、そしてクロさん、クロエさんと一緒に眼下の孤児院を見ている。



 「表面上は普通の孤児院ですわね?」


 「はいお母様。ベルトバッツの調べでは街の没落貴族の子供や捨て子がほとんどだそうです」


 「めんどくさいなぁ、エルハイミ母さん一気に乗り込んで子供たち奪って逃げ帰っちゃえばいいじゃん」


 「そうもいくまい。どうやらこれは完全に表だけのようですな、主様」


 あたしのつぶやきにコクは答えセキはめんどくさそうにそう言う。

 しかしクロさんの言う通りこれはカモフラージュか何かの為のモノだろう。

 見る限り完全に普通の孤児院だ。



 「そうするとここには飼育場が無い可能性が高いですわね?」



 「なんでそうなるでいやがります? 現に子供たちがいるではないでいやがりますか」


 クロエさんがそう思うのも当然だろう。

 しかしここは表の顔。

 非合法でしかもあっち系の奴隷ともなれば普通の子供たちを一緒するはずがない。

 それは非合法の奴隷たちがばれるかもしれないからだ。


 あたしがそう思っていると屋根の上にミスリル水銀が集まって人の形になる。


 「黒龍様、姉御ただいま戻りましたでござる。ここには地下の飼育場は無いようでござる。全ての建物を調べましたが何も無かったでござる」


 「ご苦労。お母様どうしましょうか?」


 「予想通りですわ。すると『テグの飼育場』は孤児院の無いジュリ教のようですわね。それも表に見つからない様にしている場所。もう一人の私は今晩のオークションで大量の買い出しを済ませましたわ。奴隷商の支配人との接触も取れましたし、裏でも動きが活発になりますわね」


 そう、いきなり表の産業である海産物の買い付け、そして裏の商品である奴隷の買い付け。

 ここベイベイの街は数日にしてあたしと言う大資本の人物が現れいろいろと動きを始めるだろう。


 「一旦戻りますわよ、ベルトバッツさんは引き続きまずは孤児院のある教会を調べてくださいですわ」


 そう言ってコクたちを引き連れてあたしは転移するのだった。



 * * * * *



 「お姉さま、まさかこの子たちに手を出すつもりじゃ無いでしょうね?」


 「何を言っているのですイオマ。私がそう言う事をするはず無いじゃないですかですわ!」


 連れ帰った奴隷たちは上は十四歳から下は五歳の女の子たちばかり。

 みんなそっち用の奴隷なので見た目も何も十分に可愛らしく、上品である。


 「分からないわよ、エルハイミの事だもの! だめだからね、新しい女作っちゃだめだからね!」


 シェルはあたしに抱き着きながらそう言う。

 そしてもう一人のあたしの横に居るイオマもあたしの手をぎゅっと握る。



 「「しませんわよ!! この子たちにはこの屋敷で働いてもらいますわ! これからこの拠点は人も何もどんどん増えるのですからですわ!」」



 思わずそう言うあたしたち。



 「とはいえ、主様好みの者たちばかりではないでいやがりますか?」



 最後のあたしと一緒に転移して来たクロエさんが奴隷の子供たちを見ながらそう言う。



 「お母様、未熟な体がお好みなら是非とも私を!!」


 「エルハイミ母さんほんと退くわぁ~」



 「だから違うと言っているでしょうにですわ!! クロエさん、この子たちをこの屋敷で使えるように仕込んでいただけますかですわ?」



 コクやセキがとんでもない事言っているのを思い切り否定してクロエさんにお願いをする。


 「つまり私の配下のメイドにしたてあげても好いでいやがりますね?」

 

 「お任せしますわ」


 「では主様、私めも時間の許す限り監督いたしましょう」


 クロエさんに答えているとクロさんもそう進言してくれる。

 これからもっと奴隷たちがここへ来るのだ。

 そう言う意味ではクロさんクロエさんに任せるのは悪い事ではない。


 今後の事も考えるとこの子たちを立派に鍛え上げていき将来的にはここベイベイでの拠点を守る者として成長してもらわなければだ。


 さて、この後どう出て来るかな?




 あたしはとり合えずこの子たちの名前を聞きながら今後の事を考えるのだった。   



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