第47話ジュメルの影
あたしのその申し出にセリアさんはこちらを見る。
そしてしばし悩んだ末話し始めたのだった。
それはだいぶ前の事。
「知恵の魔女」は代々「知識の塔」の「彼女」と関係を持つ一族だったらしい。
しかしその「知識の塔」がジュメルの攻撃に会い、戦闘に対して無力な「彼女」は「知恵の魔女」たちに助けを求めた。
そしてそこへ天秤の女神アガシタ様から使わされたレイム様が現れ結果「彼女」は助け出されたものの「女神の杖」は奪われ「知識の塔」も奪われそうになった。
しかし「知識の塔」は「彼女」が離れた場合その姿を消すように出来ていてジュメルは「知識の塔」を手に入れることが出来なかったそうだ。
ここまで話してセリアさんはミーティアちゃんを見る。
「ちょうどそのころ私は身籠ったばかりでお腹の中にこの子がいる事を知らなかったの‥‥‥」
そしてまたあたしを見て話し出す。
「『彼女』エリリアを助ける為に私は私の最大攻撃魔法【紅蓮業火】を使うにあたってその威力を増すために精霊王の力を借りたの。その時には依り代を私の体にしたのだけど‥‥‥」
どうやら依り代となったのはお腹の中にいた子供となってしまったらしい。
そしてそれは魂を持たない肉体に丁度入り込みそのまま安定をしてしまった。
「今ジュメルの連中は精霊王を欲している。それはお前さんの作ったあの人形と同じ異界の力を取り入れる為だ」
ゴエムがそう言う。
あたしは驚きゴエムを見る。
「まさか四連型魔結晶石核を作る気ですの!?」
「どうやら技術的にはジュメルに知れ渡っているらしい。ホリゾン帝国の宮廷魔術師の間でも以前それについての研究をするように言われた。しかし四大精霊王なんぞそうそう簡単に呼び出せないし制御だってできるはずがない。魔晶石核ならマネできたが魔結晶石核何ぞ聞いた事もないぞ?」
ゴエムはさらりと実情を話す。
うーん、確かに開発時にジャストミン教授が関わっていたから情報は流れているだろう。
しかし精霊王の召喚や魔結晶石核についてはそうそう簡単には行かない。
「でもそうすると何故ジュメルは『知識の塔』を欲しているのですの?」
「そこに分からない事を聞く為さ。精霊王を呼び出し制御し魔結晶石核を作る方法を知るためだ。まあ、精霊王についてはダークエルフたちが躍起になって召喚を試みているがな」
「ゴエム‥‥‥」
「ああ、分かっている。セリアは心配するな。俺が何とかする。エリリアとつながりのあるお前をジュメルから守ってやるさ」
んー、ゴエムってセリアさんの何なの?
「お姉さま、あの人ってセリアさんの何なんです?」
「さっきから気になるのよねぇ~」
イオマもシェルも同じことを考えている様だった。
「ゴエムは私の幼馴染です。夫のドワイッシュとよく三人で遊んだものです」
あたしたちの会話にセリアさんはそう言って笑った。
ゴエムはそっぽを向いている。
うーん、これって微妙な三角関係?
「つまりこのゴエムと言う人はセリアさんに惚れているという訳ですね、お姉さま!」
「なっ! そ、そんなんじゃねぇっ! セリアやドワイッシュは俺の友人だ、助けるのは当然だろう!?」
「ふーん、エルハイミに赤く成ったりそっちの魔女さんにも気があるなんて、やっぱり童貞ね」
「な、ど、童貞は関係ないだろうっ!!」
イオマやシェルにからかわれるゴエム。
まあセリアさんみたいな美人が幼馴染なら分からなくはないけど、こいつってまだチェリーボーイなんだなぁ。
うんうんと頷くあたしにゴエムは真っ赤になって怒鳴る。
「エルハイミ! てめえこいつらにどんな教育してんだよ!?」
「教育も何も事実でしょうですわ? そもそもゴエムは何か良い手が有るのですの?」
「うっ、そ、それは今から考えるんだよ!」
こいつかっこいい事言いながらノープランか。
仕方ない。
「シェル、まずは『魂の封印』をしますわ。ミーティアちゃんが人として成長するのに精霊王の記憶は不要ですわ」
「まあ、そうなるわよね? いいわ、手伝う!」
あたしとシェルはそう言いセリアさんにミーティアちゃんを渡してもらう。
「エルハイミさん、どうするのですか?」
「エルフの秘術、『魂の封印』を使いますわ。これは転生者などの魂が過去の記憶を引き出す事を防止して今の体の人物として人生を全うさせる為の秘術ですわ」
あたしはびっと人差し指を立てて説明をする。
するとセリアさんは驚きあたしとミーティアちゃんを見比べる。
「そんな秘術が有ったのですか‥‥‥ 人の身で魂にまで影響を及ぼせるとは、そんな技聞いた事もない」
まあ普通はそうだろう。
魂の鑑定する魔術はあるけど魂自体をどうこうする秘術は無い。
唯一有るのは転生の秘術らしいけど、それについての文献はボヘーミャにも無い。
伝説として存在するけどもしかしたら古代魔法王国には有ったかもしれない失われた秘術かもしれない。
「とにかくシェル始めますわよ!」
「分かった、良いわよエルハイミ!」
そう言ってあたしはシェルの背に手をつく。
そして魂の連結を行いながらシェルにあたしの魔力を注ぎ込む。
「行きますわ! 同調!!」
あたしは瞳をまた金色に輝かせあたしとシェルの魂を隷属の力で強固にする。
そしてシェルにもあたしの力でミーティアちゃんの魂が見えるようにする。
「おおっ、見えた! 確かに炎の精霊王だ! よぉしぃ、行くわよエルハイミ!」
あたしと同じく瞳を金色に輝かせながらシェルはミーティアちゃんの魂を精神世界から操作した精神の精霊で包み込む。
それは心地よいゆりかごのようにその魂を包み込み温かく眠らせる。
「よし、うまくいったわ! これでこの魂は封印が破られない限り眠ったまま。今後はこの子はこの体の子として成長していくわ!」
同調を終え、あたしたちはミーティアちゃんを見る。
するとミーティアちゃんの髪の毛の色がセリアさんと同じ深い緑色になる。
「ミーティア!」
セリアさんはそう言いながらミーティアちゃんを抱き上げる。
これでこの子はミーティアちゃんとして人の人生を全うできるだろう。
「セリアさん、これでミーティアちゃんはもう大丈夫ですわ。ただ、この子が大きくなって魔術を使うよになったら注意させてくださいですわ。炎の精霊はこの子とずっと一緒にいますわ。その事を意識させ決して『魂の封印』を破るような事をさせないよう気をつけさせてくださいですわ」
「エルハイミさん、ええ、ええっ、分かりました。ありがとう!」
セリアさんはミーティアちゃんを抱きしめ涙を浮かべ喜んでいる。
あたしはそんな彼女たちを見て優しく微笑むのだった。
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