第51話これからの行動
ボヘーミャで「知識の塔」の管理者事「彼女」であるエリリアさんから聞かされた神託はあたしにとってものすごく面倒な事だった。
「とはいえ、『悪魔王ヨハネス』と『魔王』をどうにかしないとティアナの転生者には会えないと言う事ですわよね? ふう、神託とはアガシタ様だけでも大変だと言うのにですわ」
「でもお姉さま、その為にまたイザンカ行くのですよね?」
「あー、北へ南へ東へとエルハイミの【異空間渡り】が無ければやっていられないわねぇ」
「しかしイザンカですか? 確かにあそこは最初の都市ですからね、魔道にも歴史が古い」
ゲストハウスで一休みしながらアンナさんを待っている。
あたしのボヤキにイオマやシェル、コクが相槌を打ちながらお茶を飲んでいる。
セリアさんは結局この学園で講師をする事となった。
「知恵の魔女」としての身は隠す事となったものの、流石にそう呼ばれていただけあって知識が非常に豊富だ。
今の学園にとって非常に重要な人物となる。
「お待たせしました、エルハイミちゃん」
どうやらアンナさんも来たようだ。
実はアンナさんにはエリリアさんの事をまだ話していない。
「すみませんわ、お忙しい中ですわ」
「いえいえ、エルハイミちゃんが私を呼ぶのです、重要なお話なのでしょう?」
あたしは頷いてからシェルを見る。
シェルは無言で精霊魔法、音消しの魔法を発動させる。
「これで私たちの会話は外へは聞こえませんわ」
「それで、エルハイミちゃん一体何ですか?」
あたしはアンナさんを見て一部始終を話し始めるのだった。
* * *
「そうですか、殿下を探すにはまだまだ苦難の道のりが有るのですね‥‥‥ しかし知恵の女神オクマスト様の神託、まず間違いないでしょうね」
そう言えばアンナさんはオクマスト教の信者だった。
宮廷魔術師でもあるアンナさんは事魔道や知識に対する切磋琢磨は素晴らしいものがある。
多分現在のボヘーミャでもトップクラスの実力の持ち主だろう。
「それで、エリリアさんの事ですが、こちらにかくまってもらえないでしょうかしらですわ?」
「ええ、それは勿論大丈夫です。セリアさんもここでは優秀な講師になるでしょうし、実績を積めばすぐにでも教授になれるでしょう。そしてオクマスト様の分身で有られる『彼女』事エリリア様までおられるとは! ああ、エルハイミちゃん、ありがとう! まさかオクマスト様にこんなに近づけるなんて!!」
うーん、信者ってアンナさんほどでもこうなっちゃうものなのかなぁ?
そう言えば昔メル教なんてのもあったけど、確かに信者諸君は異常だったもんなぁ。
恐るべし宗教。
「ではアンナさん、私たちはイザンカに行きますわ」
「そうですか‥‥‥ エルハイミちゃん、無理はしないでくださいね?」
「ええ、分かってますわ。とりあえずこの事をいろいろな所へ話してから行きますので何かありましたら一番早いソルミナ教授に風のメッセージでシェルへ連絡してくださいですわ」
あたしのその言葉にアンナさんは頷く。
そしてあたしに答えながらイオマにも話しかける。
「わかりましたエルハイミちゃん。そうそうイオマ、『鋼鉄の鎧騎士』はまだ部材が集まりきっていません。しばらくエルハイミちゃんの手助けをするといいでしょう」
「師匠! 良いんですか!?」
「イオマは頑張っています。でも本当はエルハイミちゃんから離れたくは無いのでしょう? エルハイミちゃんはすぐに無理をしますからね。シェルだけでは抑えが効かない時があります」
「何よそれ? あたしだってちゃんとエルハイミを守ってるわよ?」
そう言ってシェルはふくれてそっぽを向く。
アンナさんは笑いながらイオマを見る。
イオマは嬉しそうにしていた。
まあ、確かにイオマとは離れることが多く成って来た。
本当はティアナと一緒にティナの町で静かに暮らしながらイオマも迎えみんなで仲良く暮らしたいのがあたしの望みなんだけどね。
でもそれにはまず目の前に積み上げられた問題を解決しなければならない。
あたしは遠くイザンカの方向を見るのだった。
* * * * *
「それではセリアさん、お元気でですわ」
「エルハイミさん、あなたには何とお礼を言っていいのやら‥‥‥」
「ありがとうございました、エルハイミさん。何から何まで」
翌日あたしたちはイザンカに行くための準備として一旦実家に行くことにした。
移動する前にセリアさんやドワイッシュさんが是非にともあたしたちに挨拶をしたいと言って見送りに来てくれている。
ミーティアちゃんも一緒に来てくれている。
本来はティナの町に行くつもりだったのだけどマリアがしっかりと約束を覚えていてチョコレート、チョコレートと騒ぎまくった。
いや、忘れてはないよ?
ただあそこへ行くといろいろと面倒と言うか‥‥‥
「お母様、さあ行きましょう! お婆様のお土産、ボヘーミャ名物『たこ焼き』もしっかり買い込んでポーチに入れました! 出来たての熱々をお婆様に召し上がっていただけます!」
「おばあちゃんかぁ、またお肉もらえるかな?」
孫たちが行く気満々だ‥‥‥
きっとママンはまた大喜びになるのだろうなぁ。
仕方ない。
孫の顔を見せに行くのも娘の役目だ。
あたしはもう一度セリアさんたちに分かれの挨拶をして魔法陣を展開する。
そして魔法陣を通り抜け一同あたしの実家に行くのだった。
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