第22話旅立ち
あたしたちはユーベルトのハミルトン家に戻っていた。
「約束です、父様僕たちは冒険者になります」
バティックははっきりとパパンにそう言う。
パパンは恨めしそうにあたしを見ているけど事実なんだから仕方ない。
「‥‥‥男に二言はないが二年だぞ。二年したらちゃんと戻ってきて約束を果たしてもらうからな」
パパンは苦虫をかみつぶしたような顔をしてそう言った。
「父様!」
「やったぁ! 」
パパンからそう言われてバティックもカルロスも大喜びだ。
そしてため息をついたパパンはあたしに向き直り話し始める。
「全く、私の子供たちはどうしてこう親元を離れたがるのかな? エルハイミもティアナ殿下の転生を探さない時は家でゆっくりすればいいものを」
「そうもいきませんわ。この後私はティナの町に戻り『マシンドール工房』を『鋼鉄の鎧騎士工房』へと改築をしなければなりませんわ」
あたしがそう言うとパパンはもう一度溜息をつく。
「まあ、まだまだ戦争は終わらん。『ガーディアン計画』のおかげでジュメルの残存分子もガレントに下手にちょっかいが出せないのは良い事だがな」
「鋼鉄の鎧騎士」は既に五体がロールアウトしていてマシンドールたちに変わるガレント王国の守りの要になりつつある。
うち三体は最前線に投入され戦争に参加している。
ホリゾン帝国もまだまだジュメルの「巨人」の卵を保有していたらしく孵化すると直ぐに前線に投入している。
しかし「鋼鉄の鎧騎士」零号機と二号機、三号機が前線でそれらを食い止めている。
現在制作中の六号機と七号機の二体はまだティナの町で作成中だ。
「戦況は有利では無いのですの?」
あたしの知る限りでは徐々に押しているはずだ。
だが春になり雪解けもしても進行がなかなか進んでいないもの事実だった。
実際「鋼鉄の鎧騎士」も戦う都度修理や部品交換が必要な時がある。
なので「巨人」が出てきた時の為に無理して戦線の拡大も出来ない。
「不利では無い。しかし『鋼鉄の鎧騎士』がな。あれはユーベルトの街で部品をどうこうできるものでは無いからな」
パパンはそう言ってもう一度溜息をつく。
確かに使用している基本フレームはエルリウムγ、外装もミスリル合金を基本としているので普通の素材とは違う。
ユーベルトでもまだまだマシンドールのパーツは生産しているけどその数もだいぶ減って来た。
だからと言って『鋼鉄の鎧騎士』の部品を作る事は出来ない。
「早く戦争も終わり落ち着いてもらいたいものだがな」
パパンは喜んでいるバティックとカルロスを見ている。
まあ、この二人には無理はしない様に、そしてパーティーを組む予定のファルさんもいるので可能な限り危険が少ない冒険をするように言っているのでいきなり傭兵として戦争に行く事は無いだろう。
「どちらにせよ親の気子知らずだが命だけは粗末にしないでくれ、エルハイミ」
それはパパンの本音だろう。
あたしは何も言わず頷く。
「あらあらあら~、お話は終わったかしらぁ? ねぇねぇ、エルハイミ今回は少しはゆっくり出来無いのぉ? コクちゃんやセキちゃんともっとお話ししたいのに~」
重要な話だったのでコクたちをママンに預けていたがあたしたちの話が終わったと見てこちらに来た。
「ねぇねぇ、おばあちゃんこのソーセージもっと食べたい!」
「これセキ、お婆様に失礼ではないですか? ちゃんと『お婆様』とお呼びしなさい」
「あらあらあら~相変わらずコクちゃんはしっかりものねぇ~」
どうやら問題は無かったようだ。
「今回もそれほど長くはいられませんわ。この後私もティナの町に戻り工房の改築作業を手伝わなければなりませんわ」
「あらあらあら~、そうするとまたガルザイルに行ってゲート使ってティナの町なのぉ? ゲートがもっと近くにあればいいのにね~」
ママンはそう言うけどあれがあちらこちらに有ったら大問題だ。
事実中央都市に生き残っていたゲートのおかげでホリゾン帝国から十二使徒の侵入を許している。
「お母様、ゲートがそうそう近くに都合よくあるはず無いですわ。近くなら『異空間渡り』は出来ましてもあれほど遠くになってしまっては‥‥‥」
そう、あたしは言いかけてふとティナの町とジルの村を思い出す。
あたしの「異空間渡り」はあの距離も行けた。
まさかと思うけどここからティナの町も行けるのかな?
あたしは何となくティナの町のあたしたちの部屋を思い出しイメージする。
そして魔法陣を発生させてみると‥‥‥
「えっ、ですわ!?」
つながった!?
まさか、あそこまで結構な距離が有ると言うのに!?
あたしはその魔法陣に入ってみるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます